第55話 別れ

 朝食の片付けが済むと、彼は「しばらく会えない、ごめんね」と言って帰っていった。

 どうして……?

 悩んでも、何も答えは出ない。


 LINEを起動してみるが、指がうまく動かない。

 ツイキャスは、のも配信するのも気分になれない。


 ***


 彼はいつものように朝7時からと金曜日の夜の配信を続けていたので、何事もなかったかのように接している、つもりだった。


 そして、大晦日の夜。彼は【重要なお知らせ】という通知を出して、配信を始めた。


「みなさま、今年は一年間ありがとうございました。

 僕の病気のことや花ちゃんのこと、いろいろと激動の一年だったように思います。

 そして……僕はリスナーさんたちに言えない事情ができてしまいました。それはもちろん、恋人である花ちゃん……いや、ひかりにも、まだ言えません。

 そういった事情から来年から、配信は不定期になりますが、今後もよろしくお願いいたします」


――私にも言えない事情? どういうことだろう……移植が決まったなら、言ってくれるだろうし……。


 ***


 除夜の鐘の音が聞こえる。彼の配信からも、いくらか遅れて聞こえる。

 同じ音を聞いているのだろうか……。


 思い切ってLINEを送ってみることにした。


菅谷 ひかり『あけましておめでとうございます』

網谷 隆二『今年もよろしく』


 何をよろしくすればいいのかわからず、なんと返せばいいのかもわからず、そのまま眠ってしまった。

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