第20話 楽勝だな。
自衛だけならともかく、味方に迷惑は掛けられない。見よう見まねでは無理だ。
それどころか、まずは視界の確保からだった。肉眼で見えなくても
結構痛い思いをしたが、何とか周囲の木にぶつけず
取り回しが馴染めば、火豚からの自衛は問題なく出来た。この有り余る防御性能で味方を援護するのだ。
念を押されたのが、
「それでも」澄んだ海の色が意志を伝える。「これはプランです。破綻すれば、全員であなたを守ります。バツ軍曹」
「うーん、ただでさえ覚悟が足りないなと思ってるのに」
「なぜ
手で、そっと俺の胸に触れる。
「想定外の事態が起きたら期待しちゃいますけど、それでも無理なら、体を張ってあなたを還します」
「いや、そこでみんなを犠牲に守られて生き延びろって……」
「大丈夫、そう簡単に死にません。普通の人より頑丈なんです」
グローブをしていても、俺の胸に当てられていた手には柔らかさを感じていた。それが急に厚みを増して硬くなり、戦闘服の腕も俺以上の太さになる。
「私、『
☆
妖術で人体そのものを強化する『
手に触ってみる。
「カッチカチだな」
「ゾックゾクするでしょ」
「……いや待て、おっ、胸は?」
「やっとその気になってくれましたか」
腕を元に戻して後ろに組み、どうぞとばかりにすんごい胸を突き出す。
「これは、あれだ、上官として、じゃパワハラだ、あれだ、仲間が心配だから」
「それもセクハラだけどいいって、はい!」
握った俺の両手を、すんごい胸に押し当てた。
「おっほ、ありがとうございます! 恐縮です!」
ああ柔らかい! どうなってんの!
「気持ち悪くないですか?」
「なんで? 気持ち良さしかないですとも。それより痛かったりしないの?」
「硬化は筋肉を緊張させるのと大差ないです。やり過ぎると疲れますし、筋肉痛みたいになります。代謝制御で簡単に治らないのが嫌ですね」
「その、ありがたいことなんですが、大きさはこれは」
「自由自在です。てへ」
「その、オーダーとかしていいですか?」
「大きすぎですよね。隊長に負けたくなかっただけなんで……これぐらいですか?」
「……完璧です」手のひらサイズ。じゃなくて、公開情報なのな。
「でも作戦中はカッチカチですからね。触っちゃダメですよ」
「触ったら隊長に撃たれるじゃん」
☆
一班十人で、五班。
召喚した火熊は召使拘令科の召喚士が制御する。第一班はその援護。目標地点まで中央を進む。第二、第三班は両翼。残りは後方から。五班がなるべく五芒星となるように位置取る。
俺達は第五班。第五は最上という伝統があるようだが、恥じぬよう役に立ちたい。
「俺にも召喚士がいるのかな」
「コツソ少将だったんじゃないですかね。
何重にも守られているのに、不気味な森の中を進むのは緊張する。
結構な時間、結構な距離を進んだ。先頭はもうじき目標地点――
「敵襲、第一班。支援不要。各員その場で索敵」
「ちょうどいいかも。軍曹、一班の戦闘を背中でモニターしてみてください」
「了解、やってみる」
うすぼんやりと見る練習をしていた後方視界をモニターにする。脳内で通常視界を疎かにせず併用できるようになってきた。
火豚の群れだが、もう壊滅しつつある。火熊が強すぎるのだ。
一班に突進してきた火豚も、
「ん、射撃?」
「斥力場に衝突した瞬間に撃つと、その場の妖気を巻き込んで叩き込めるんです。これが契闇流妖術【
派生技みたいなのあるのか。なんて話をしているうちに敵は全滅した。
楽勝だな。
つい、帰った後のことを考えたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます