第23話 どんとこい!
能力に流されるまま、ウリアの『
構成した仮想身体を見る。線の細い美少年。アイドルか。この顔じゃニーズあるぞ。勿体ない、って余計なお世話だな。
そんなことを考えている間に、眼前にある俺よりかなりデカい蟻塚の中に子宮に相当する器官が設けられ、血漿で満たされると共に、神経を傷付ける恐れのある痛んだ骨格が分解された。能力に流されるままである。
ウリアの
「――誰か、居ますか?」
直結している
「起きたかウリア。大丈夫だ。俺が居る。少しずつ
「無事だったんですね。よかった。気分はとてもいいです」
慎重に接続し、優先権を譲渡した。まだ補助はできるようにしてある。機能しているのは脳だけだが、シミュレーターポッドと同様にあとは
半分ほどしか身体が残っていない状態なのに、ウリアは冷静だ。
「だって、死んだと思ってましたし」
「全然お礼じゃ足りないけど、本当にありがとう。生きててくれて、嬉しい」
「これほど頑丈なんて、自分でもビックリです」
「
「他の問題点ですね……全部見ました?」
「命に関わるとこだけね。俺も俺の状態を言うよ。何でもできる。どんな風にでもできる。元通りにも、元の性別にも。
「何でも、ですか……なら決めました。本物の女になりたいです」
決断が早い。思う所は聞かない。
「
「はい」
「選択肢は無数にあるよ」
「元の姿を参考に、バツ軍曹のお好みで」
「そんな責任負えるか。仮組みするから一緒に調整しよう」
☆
身体構成。神経接続。
蟻塚に裂け目ができる。血漿が溢れ、白い背中が見える。
蝉の羽化だ。
ゆっくりとのけぞるようにしなだれかかる娘を抱きとめる。
一糸纏わぬその姿は、ただただ美しかった。俺の娘という感覚すらある。
するりと全身を引き抜くと、早くも
「ただいまです」
「おかえり。誕生日おめでとう」
お姫様抱っこのまま、キスをした。
ウリアを地面に立たせると、声が聞こえた。
〔――おい、もういいか。お前は是非もないと言ったな。根性を見せろよ――〕
そうだった。確かに言った。
どうなろうが、ウリアの命には替えられなかった。どんとこい!
〔――
どんとこい!
蓋を外したミキサーから脳が噴出する感覚と共に、俺は吐いたゲロに顔から突っ込んでのたうち回った。
☆
意識が澄んでいる。ゲロの分解も済んでいる。
実際にはほんの僅かの間だったようだ。恐怖を煽ってくれてよかった。後悔しない。ギリ後悔しないで済んだ。ウリアの命には替えられなかった。どんとこいなのだ。
そのウリアは涙目である。
「大丈夫だいじょぶ、ちょっと頭を使いすぎただけ。それより調子はどうだ?」
部位欠損どころではない。戦闘能力がなければ一般人である。撤退も視野に。
「まだ設計値には到達してませんが――以前とは比べものになりません。全て成功です。さぁ行きましょう、仲間の所に」
「合流はするが、戦闘はダメだ」
「どうしてです。せっかくの新しい力、使わずにどうするんです」
「それはな、いま終わったからだ」
損害ゼロ。強すぎだろ俺達。
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