第46話 王都へ
王都が見えてきた。
立派な城郭都市だ。
小高い丘に築かれた都市のようで、遠くからでもその偉容が一目でわかる。
全体的に黒っぽい。建材の石が黒いようだ。城壁も黒いし、建物も基本的に石造りなのか、黒っぽい。
そのせいか、なんだか、陰鬱な印象を受ける。
リリムによると、城壁は三重になっているらしい。
王城を取り囲む一つ目の城壁。
その回りの貴族街を取り囲む二つ目の城壁。
そして都市全体を取り囲む三つ目の城壁。
一番外側の城壁は出入り自由だが、二つ目の城壁は近付くだけで、不審者は殺されることもあるらしい。
私はフードを深めに被り、最初の城壁の門へ近づいていく。
運よく小雨が降りだしたので、まわりも皆、フードを被っていて違和感はない、はずだ。
リリムには兵隊に見つかると捕まるかも、とは伝えてあるが、やはりついてくるつもりらしい。
無事に門を通りすぎる。
所々、見回りの兵士が歩いている。
二人一組で、制服なのか真っ黒なコートを羽織り、フードを目深に被った兵士たち。
小雨の中ということもあり、誰もが没個性的で、まるで人ではなくて、コートの中身が人形か機械のように思える。
あまり注視し過ぎないようにし、何気ない風を装って街を進む。
人通りは雨でも多い。
誰もが足早に歩き、せわしない。
とりあえず、リリムがおすすめの宿があると言うので、そこに向かう。
リリム曰く、メシが食べれて、ベッドに虫が居なくて、脛にキズがあっても優しい宿らしい。
一般的な宿だと手配書が出回っていて、怪しい人相の泊まり客がいたらしい衛兵へ届け出る決まりがあるらしい。これからいく宿は、コインの輝きで店主の目が眩んで何も見えなくなってくれるそうだ。
めちゃくちゃ胡散臭い。
だいたい、地下洞窟の抜け道を知っているあたりから、リリムが危ない筋の人間に思えて仕方ない。
路地裏を進み、宿についた、らしい。
看板も出ておらず、一見やや大きめの民家といった感じの建物だ。
リリムについて中に入る。
中の作りも一見、民家風だ。
「お帰り、リリムじゃないか。だいぶご無沙汰だね」
恰幅のいい女主人とおぼしき人物が迎えてくれる。
「やあ、ビッグレディ、また厄介になるよ!」
「リリムの厄介は、本当に厄介だったりするからね。高くなるよ」
「はいはい、わかってるよ。カルド、頼む」
私はビッグレディと言う名前の女主人らしき人物に言われるがまま、料金を支払う。
ちなみにリリムは無一文らしい。
それもリリムが私から離れない理由かもしれない。
たかられている感じがしなくもないが、まあ大した額じゃないから良しとする。
部屋に落ち着くと、リリムは情報収集に行くからと、いい笑顔で右手を出してくる。
笑顔で見つめ合う私とリリム。
互いに最大限の笑顔。
だんだん笑顔がひきつり始める。
まだまだ余裕のリリム。
……私が根負けして、飲み代用に、コインをリリムの右手にのせる。
せめてもと、シロガネの見た目の特徴だけは伝えておく。
リリムが部屋を出ていくと、私はロイにも情報収集をお願いする。
特に二つ目の門の内側の様子を探るようにお願いしておく。
私自身は今のうちに戦力増強を目指し、部屋に籠って錬金術にせいを出す。
いつなんどき、戦闘になるかもしれない。
見つかれば即、そこが戦いになる可能性が高いはずだ。
そもそもシロガネの居る場所によっては攻め入る可能性すらある。
即対応出来るように手数を増やすと共に、継戦能力向上のため、ストックの増強も欠かせない。
久しぶりの静かな時間、ロイとリリムが戻るまで錬金術に没頭した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます