第40話 寄り道 海エルフの話
今、私は森の中で迷子の子供を探している。
どうしてこうなったか。
そもそもの原因は、強引についてきた海エルフのリリムが、極度の巻き込まれ体質&巻き込み体質なこと。
義を見て~、的な性格も相まって、彼女は困っている人を見ると助けずには居られないらしい。
そして、当然カルドも手伝うよね、的な視線をこちらにも向けてくる。
私の軟弱なハートにはそれが突き刺さる訳ですよ。仕方なく手伝うのだけど、一体これで寄り道は何度目だか。
私がため息をついていると、クレナイが反応して足をタップしてくる。
どうやら迷子の子供を見つけたらしい。
リリムに教えてあげると、飛び出して行く。
無事に保護し、肩車をして家まで送り届けるリリム。
子供もあっという間にリリムになついているようだ。
無事に木こりの家までたどり着き、子供を渡す。
木こりの夫婦は大いに喜び、是非泊まっていってほしいとのこと。
これ幸いと、リリムだけ泊まっていきなよと言うと、彼女はまた、例の恩義がーっと言いだして、結局二人して、木こりの夫婦の歓待は辞することとなった。
これは本当に恩義を感じているのか、何か裏があるのか、判別できないな。
こういう脳筋系の方は本当に苦手だ。
そのまま海沿いの街道にまで戻る。
その日は結局、旅程は捗らず、野営することになった。
食事も終わり、テントもはりおわって二人で焚き火を囲んでいると、突然リリムが自分がたりを始める
ほんとに唐突だ、とは思ったが、特に止める理由もないので、そのまま語らせる。
「海エルフは船団で生活をしているんだけど、カルドは知っているかい?」
「いや、不勉強なもので」
「まあ、ここらの民には馴染みがないだろうしね。もともと俺たちの部族も森に住んでいたらしい」
「ほう、今でも森に住んでいるエルフもいるのか」
(生粋のエルフかっ!)
「いや、多分いないぞ」
(いないのかよっ!)
「大昔に、予言があって、すべてのエルフが海に出たんだ。まあ、それでも時たま俺みたいにハグレになるやつはいただろうけど、まとまったエルフの森の集落は聞いたことないな」
(残念すぎる。)
「……リリムはハグレたのか?」
「うーむ、まあ、そうだ。なかなか、船団の生活ってのも、かたっくるしくてな。何をするにも予言が第一の頑固なジジババがトップにいて、ね」
「ふーん。それで、誰かを助けるために飛び出してきた?」
「良くわかったな。そう、船団にいると人助けすら出来なかった。どうにも性分にあわなくてな」
「まあ、見てると何となく、納得できるよ」
「そうか。もちろん故郷だから船での生活が懐かしい気持ちもあるんだがね。まあ戻ることはないだろうね」
そこでリリムが焚き火に枯れ枝を投げ入れる。
パチッと音がして枝に火がつく。
また、話し始めるリリム。
「それで、どこまで話したっけ。そうそう、大昔の予言で俺の先祖はみな海に出たんだよ」
(あっ、話し、続くんだ……)
「その予言によると、この世の終焉のときに、俺たちエルフが果たすべき使命があるんだと」
「予言ねー」
「そう、予言だ。俺もうろ覚えなんだが、北より大寒波きたる時、嵐のなか雨がうまれる。雨を生みし者へその血を捧げよ。太古の血筋、創生の記憶。なんたらかんたらって感じの予言だ」
(ほんとにうろ覚えだなっ!)
「あー、それでリリムたち海エルフはその予言を果たすためにって感じで行動していると」
「ああ、俺以外のだいたいの海エルフはそうだな」
「で、なんで突然そんな話し、したんだ?」
「何となくカルドには話しときたくてな」
(うーん、これだから感覚派の脳筋は困る。まあ本当に理由ないんだろうな)
だいたいリリムは話したいことを話したのか、その後はゆったりとした時間が流れる。
そろそろ寝るか、というとき、突然クレナイが反応する。
それは緊急事態を知らせる合図だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます