第31話 閑話 シロガネ 3
わたくしは海辺にいた少女に声をかけます。
「はじめまして。お嬢さん、近くの村の子?」
その子が答えます。
「お姉さん、こんにちはー。そんな感じー。お姉さんは釣りをするのー?」
何だかのんびりした話し方の子ですね。近くの村でみたかしら。
「そうなんです。今日こそは釣ってみせます」
「あははー。お姉さん、釣り教えてあげよっか。僕、リルリーム」
「リルリームちゃんは釣り、得意なんですか。わたくしはシロガネと言います」
「ここら辺じゃ、他に遊ぶもの無いしねー。じゃあ、今から僕がシロガネの先生ー」
「はい、リルリーム先生。よろしくお願いいたします」
わたくしは先達に教えを乞うのは吝かではありません。
早速色々教わります。
フムフム。ほうほう。
いや、やはり先人の知恵と言うのは素晴らしい。
知識だけではわからないこと、沢山ありました。
今日は初めての獲物を釣り上げました。
帰ったらカルドに料理していただきましょう。
リルリーム先生様々です。
なんと、釣りスキルも生えています!
今度会ったらお礼をしなければいけませんね。
カルドの隠しているお菓子でも持っていってあげましょう。
わたくしは次の日も海辺に来ました。
リルリーム先生はいらっしゃらないようですね。
わたくしは釣りをして帰りました。昨日ほどでは無いですが、少し釣れました。
その翌日も、翌々日も。毎日、海岸に来ては釣りをして帰るだけの日が続きました。
あれから一度もリルリーム先生にお会いできません。
ご病気かしら。
わたくしは村へお見舞いに行くことにしました。
村につきました。何だかどんよりとした雰囲気。
ちょうど見かけた、顔馴染みの町の方から、お話しをうかがいます。
なんと、この村ではいま、何件もの殺人事件が起こっているそうです。
しかも、一家まとめてそれぞれの家で殺害されているとのこと。
なんと痛ましいのでしょう。
もしやリルリーム先生も。
私は慌てて、リルリーム先生のことをうかがいます。
……やはり、リルリーム先生も殺人事件に巻き込まれてしまっていたそうです。
最初に被害に遭われてしまっていたそうで、ご家族と一緒に。
死体はバラバラにされていて、それはそれは酷い惨状だったそうです。
わたくしは意気消沈して塔に戻りました。
カルドには、近くの村で殺人事件が起きていることを報告しました。
カルドは、一瞬痛ましげな顔をしたあと、
「そう、か」
と一言呟いただけでした。
翌日、わたくしは塔から少し離れた海の見える丘にやって来ました。
ここには花が咲いていることが多いので、摘みに来ました。
所々に小さな白い花が咲いています。
少しづつ、摘み集めます。
集まると、村に向かいました。
村にはまた顔見知りの方がいらしたので、リルリーム先生のお家の場所を伺います。
案内してくれるそうです。
そこには、どこにでもありそうな、でもきっと暖かな家族が築かれていたと思わせる家がありました。
中はまだ片付いてないからと、その顔見知りの方に言われました。その方が去ると、わたくしは家の前に、先ほど摘んできた花と、カルドのへそくりのお菓子を手向けます。
そして膝まづき、祈り始めました。
わたくしの創造主はカルドですし、この世界の神はそのカルドをこの世界に遣わすといったトンチキなことをする存在です。
ゆえに、ただただ、鎮魂を祈りつづけました。
(リルリーム先生、釣りスキルをありがとうございます。安らかにお眠り下さい……)
どれ程祈ったことでしょう。
急に、家の中に何かの気配を感じ始めます。
私は祈りの姿勢を維持したまま、こっそりステータスを開きます。
新しいスキルが生えていました。
霊感レベル1:第六感にプラス補正
このスキルの影響ですね。さて、どおしましょう。
わたくしはしばし悩みましたが、家の中を確認することにしました。
一応、自身のスキルを再度確認し、家に近づくと、ゆっくりと扉に手をかけます。
そっと覗き込むと、そこには、血が乾いて黒ずんだ汚れが部屋のそこかしこに残るなか、笑顔で手を振るリルリーム先生が立っていました。
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