第四章:遥かなる闇へと音も無く、白銀は月影に煌めいて/01
第四章:遥かなる闇へと音も無く、白銀は月影に煌めいて
翌日の夕刻頃。例によって響子に呼び出されていた瑛士と玲奈の二人は、今日も今日とて新宿某所にあるスナック『エデン』に顔を出していた。
「――――とまあ、奴が吐いたのはこれで全部だ」
店の中。いつものように玲奈と隣り合わせになってカウンター席に腰掛けながら、瑛士はカウンターの向こう側に立つ響子に昨日のコトを――――例の若手実業家、今は亡き霧島啓一が吐いた情報を、昨日電話口で話したことも含めて彼女に改めて説明していた。
「ふうん、なるほどねえ」
ひとしきりの説明が終わった後、響子はうんうんと独りで何度も頷きながら相槌を打つみたく唸る。
「ま、今更な話題も多いから……改めて確認ってトコだな。昨日電話で話した通り、俺たちは例のパーティに潜入するつもりだ」
「知ってる。昨日も電話でアンタに言った通り、パーティへ潜入する為の手筈はアタシの方で整えておくわ」
腕組みをする響子がそう言うと、瑛士は「ちなみに聞かせて貰いたいんだが、どうやって手引きするつもりだ?」と彼女に問う。すると響子はニヤリとして、彼にこう返した。
「パーティ会場のホテル、実はアタシも結構顔が利くトコでね。ホテル側への根回しも完了。準備は万事整えてあるわ」
「……ババアよ、仕事が幾ら何でも早すぎねえか? それに毎度のことながら、アンタの顔の広さはユーラシア大陸並みだぜ。流石だよ、元公安の敏腕刑事様は」
ぽかんとした瑛士が皮肉交じりにその異様なまでの手際の良さを褒めてやれば、響子はムフフと自慢げに笑う。
そうした後で、響子は一呼吸置いて話を一度区切り。カウンター席に座る瑛士と玲奈の顔を一度見渡した後で、二人に向かってこんな言葉を告げた。
「そうそう。アンタらの他にもう一人、アタシの方で手配したスパイを別ルートで潜り込ませるわ」
「スパイだって……?」
「……響子、気になる。詳細を希望」
響子の言葉を聞き、不思議そうに揃って首を傾げる二人。
そんな二人の、主に玲奈の方に向かって響子は「まあまあ、そう慌てなさんな」と言うと、カウンターへ雑に放ってあった煙草の箱と百円ライターを手繰り寄せて。ルージュの目立つ唇に咥えたラーク・マイルドの煙草にその安っぽいライターで火を灯し、ふぅ、と紫煙混じりの息を一度大きく吐き出すと。その後で響子はチラリと店の天井に視線を向ける。
「出てらっしゃいな。もうそこに居るんだろう?」
店の天井を見上げながら、響子が虚空に向かって呼び掛ける。
そんな彼女の姿を目の前で眺めながら、瑛士が何をやっているんだと呆れ返っていると。遂にボケが始まったか……と響子に対し全力で肩を竦めていると。
すると――――何の前触れもなく、店の天井から
「んなっ!?」
自分のすぐ傍に、どこからともなく降ってきた謎の人影。それに驚いた瑛士は素っ頓狂な声を上げながら、座っていた席から思わず飛び退いてしまう。
そうして飛び退いた瑛士が、そこに見たのは――――。
「…………お久しぶりです、響子。
――――白銀の髪を揺らす、寡黙で小柄な少女の姿だった。
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