第二章:プライベート・アイズ/06

 ――――その後の経過を説明しよう。

 戦闘技術とは異なり、料理方面は壊滅的な下手くそさである玲奈だが。予想通りというべきか、何度も大惨事一歩手前のことをしでかしてくれていた。

 幾らか例を挙げるとすれば、こんな感じだ。

 …………ひとつ。まず食材を切ってくれと頼めば、玲奈は左手に持った包丁をドスンドスンとまな板に、それこそナイフで急所を斬りつけるような手つきで豪快に叩き付けまくった。

 お察しの通り、食材は……皮を剥いたジャガイモなのだが。それはそれは凄い豪快な姿に切り刻まれていた。形も何もあったもんじゃない、不揃いという言葉では生温いような不格好さだ。もしこれが仮に人体だったとしたら、目を覆いたくなるほどにスプラッタな様相になっていたことだろう。R‐15指定は確実だ。

 …………ふたつ。塩と砂糖を間違えて振りかけそうになっていた。

 これはまあ、よくあるミスだ。まあ間違えるだろうなと予め予想していた瑛士が、寸前で玲奈を止めたから事なきを得たから良かったものの……もしあのまま気付かずにいたとしたら、夕飯は物凄いエキセントリックな味付けになっていたことだろう。

 …………みっつ。何を思ってか玲奈は卵を電子レンジに直で突っ込み、危うく爆発させかけていた。

 これに関しては何がどうなって卵を電子レンジで温めようとしたのか、何も分からない。というか卵自体を今日は使わないのに、玲奈は本当に何を思ったのか……そんな奇行に出ていた。

 まあ、こちらも警戒していた瑛士が直前で食い止めたから、どうにかこうにか事なきを得た。こちらもあのまま放置していれば……電子レンジ内部で卵が大爆発。まあ間違いなく電子レンジくんはお釈迦になり、買い換える羽目になっていたことだろう。

 ――――とまあ、少し例を挙げるだけでこれほどのものだ。

 それ以外にも幾らか危ない局面はあったが……全て瑛士が寸前で食い止めることにより、どうにかこうにか料理そのものが崩壊するという最悪の事態は回避することが出来て。かなりの紆余曲折はあったものの、ダイニング・テーブルには何とかマトモな形で本日の夕飯が出揃っていた。

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