第39話 愛のカラットとココア☆
(そうか……。そうだったんだ!私は一年前の試練で夢を叶えた。今は〝ぴぴ〟が願った夢でもう一度、試験が行われている。でも、なんで〝ぴぴ〟はもう一度、試練の開催を願ったんだろう……。理由は分からない。でも、今ならわかる気がする。きっと、〝ぴぴ〟なりの思うことがあったんだとう思う。〝ぴぴ〟のしたい事があったんだ……。〝ぴぴ〟に会いたいな……。〝ぴぴ〟……〝ぴぴ〟)
「〝ぴぴ〟!!」
ココアが新たに足を踏み入れたここは今までの黒い鏡が作っていた迷路とは全く異なっていた。
ただ、ただ目の前に広がるのはどこまでも続く真っ白な空間。
この場所はしばらく立っていると、右も左も上も下も平衡感覚が支配されるような感覚に落ちいる。
ココアは頭を横にぶんぶんと振ると、歩き始めた。
少し進んでは立ち止まり、少し進んでは立ち止まるをしばらく繰り返す。
「〝ぴぴ〟、〝ぴぴ〟!!」
(私はいま……今、〝ぴぴ〟に会いたい……)
「ぴ………ぴ………。」
一歩、二歩、三歩と歩き出し、何もないところでココアはつまずいた。上手くバランスが取れず、雪が降り積もったような地面に手をついた。と、同時に手と手の間に静かに黒い文字が広がっていく。
「あなたに……とっての……愛のカラットとは……?」
ココアは並んだ文字をポツリポツリと読み始めた。
「私にとっての愛のカラット……」
ココアはその場所に座り直すと、まつ毛を微かに揺らしながら、しっかりと目を閉じた。
「愛のカラット……」
(愛のカラットを手にした時は……おじいちゃんとおばあちゃんの家に行っていた時だったな。これからも、ずっと、絶対に忘れない。あのお爺さんとお婆さんのこと。優しくしてくれて嬉しかったし、それと同時に胸もすごい締め付けられたな。もう、お爺さんとお婆さんはカラットがあった間の記憶はないと思うけれど……今も笑ってくらいてくれているかな……。また、来年、会えるといいなぁ。……愛のカラットは優しいカラットのような気がしたけれど、私がちょっと、残酷だと言ったら〝ぴぴ〟は愛はそういうものだって言ってたっけ……)
「ふふ、確かにそうかも……」
ココアはそっと目を開いた。
(私はまだ恋愛とかそう言うのはわからないけれど、愛って恋愛だけじゃない。誰かが誰かを思えば、きっと愛なんだなぁ。そして深く思えば思うほど、相手の傷も受け止めることになっていくのかも。それがきっと……)
「私にとっての愛のカラットは……私を強くしてくれるもの。誰かを思うことは幸せなことなの。そして、私は誰かを想うことで強くなっていくんだと思う。お父さんも好きだし、お母さんも好き、2人のおじいいちゃんとおばあちゃんも好きだし、奈々ちゃんも、中前さんも先生もクラスの皆もかけがえのないもの。そしてカラットを通して沢山の出会いがあった。クリムくんやお伽話の中の人達に親指姫、御神木にお爺さんとお婆さん……記憶がなくなっても、ずっと、忘れない。大好きな人達」
ココアは立ち上がると、一点をしっかりと見つめた。
「そして、〝ぴぴ〟……大好きだよ!!」
ココアのその言葉と同時に目の前がキラッと光り、その明かりがどんどん大きくなった。
膨張した光りは限界まで膨らむと、弾け飛ぶように光りを散らした。
ココアは眩しさに目を閉じたが、弾け飛んだ瞬間、目の前に現れたピンクページュの存在に飛びつく。
「〝ぴぴ〟……!!〝ぴぴ〟!」
「ココア……」
「〝ぴぴ〟、会いたかったよ!!もう!どこに行ってたの!?」
「わからないのじゃ……。あの夜……。ココアと心が繋がらなくなってしまった日、少し頭を冷やそうと外を出たのじゃが……。そこからの記憶が今の今までないのじゃ……。ごめん。ココア……ワシ……」
「〝ぴぴ〟……、もういいの……。〝ぴぴ〟の過去の記憶を見てこんなこと言うのもなんだけど、〝ぴぴ〟は何か思いがあって、また試練の開催を望んだんでしょ?じゃあ、私もそれに協力させて?」
「ココア……」
「また、一緒に頑張ろ?」
〝ぴぴ〟コクっと頷くと、ココアの肩に移動する。
ココアと〝ぴぴ〟は顔を合わせると同じタイミングで笑い合った。
「あのね。この空間の出口がわからないの。今までは鏡の迷路で質問に答えたら、次の場所まで行けたんだけど……」
「ココアはこの空間はワンダーラビリットの一部じゃ。それも、この試練のためだけに女王が作ったのじゃ。一年前と同じなのじゃ」
「そうなの? 私はまだ、最後の試練の記憶はあまり思い出せてなくって」
「思い出せることのほうが奇跡じゃ。すでに、質問には答えておる。下界に戻されていないってことは一応、試練は着々と進んでいるということじゃ。じゃから、ココアが今この場所で一歩を踏み出せば、きっと次の空間に辿りつく」
「えっ? そんなことあるの?」
「ここはワンダーラビリットじゃ。下界と同じ常識でいられたら、困るのじゃ」
「そっか……。じゃ、じゃあ……」
「早く踏み出すのじゃ!」
「ふふっ、いつもの〝ぴぴ〟だ!」
「何を言っておるのじゃ!まったく……」
「せえの!!」
ココアは一歩を踏み出すと、この真っ白い空間からココアの姿は一瞬にして消えた。
「早く、私のところまでくるのだ。ココア」
うさぎの仮面を付けて豪華なドレスに包んだ人物は人物は不敵に笑った。
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