第4話 うさぎのぬいぐるみとココア
「起きるのじゃ」
ペシペシ
「起きるのじゃ!」
ペシペシ
夜も深まりつつある頃、ココアを起こす者がいた。
「うーん……」
「起きるのじゃ!」
ココアの頬をしきりに叩いていた者も仕舞いにはココアの頬をつねっていた。
「な〜に?まだ、夜だよ……」
部屋に朝日がまだ射してないのは寝ぼけながらも分かった。
そして暗闇に浮かぶぼんやりとした耳の長い影。
(部屋に……誰か…いる?)
「部屋に誰かいる!?」
ココアはベッドから飛び起きて、電気を点ける。
「遅いのじゃ!」
「な、何?う、うさぎのぬいぐるみぃ〜!?」
それは寝る前にココアの部屋に飛んできたうさぎのぬいぐるみだった。
「ぬ、ぬ、ぬいぐるみがしゃべってる……。私まだ、夢見てる?」
そう言うとココアは自分の頬をつねってはさすり、つねってはさすりを繰り返す。
「兎に角、時間がない!詳しいことは、後じゃ!」
「?」
「ワシの名前は〝ぴぴ〟じゃ」
そう言うと〝ぴぴ〟はココアの方を向く。
「お主の夢を叶えにきたのじゃ〜」
腰に手を当て、ココアに〝ビシッ〟と指を指す。
「私の名前はココアです」
「……」
「……」
「?……それって、ホント!?」
〝ぴぴ〟に詰め寄るココア。
「ワンテンポ遅いのじゃ。それがまぁ……いろいろ、あるのじゃが」
「お願い私の夢を叶えて!!!!」
「待て!待つのじゃ!すぐにという訳にはいかないのじゃ。一応、お主は選ばれたのじゃ!」
「? 選ばれた?」
「今日、お主は何か拾ったじゃろう?」
「あっ!あの水晶?」
「そう!あれはワシの国のカラットと呼ばれるありがたい玉なのじゃ」
「……。ありがたい玉があんな所に落ちてたの?」
目を点にするココアを無視して淡々と続けていく〝ぴぴ〟。
「そ、そうじゃ!ワシたちの女王様は何百年に一度、選ばれた者の夢と選ばれた者を選んだ者、つまりワシのことじゃな、の夢を叶えてくれるのじゃ!」
「…それが私なの?」
ココアは指で自分を指す。
「そうじゃ…だが、すぐにとはいかない。」
「はぁ…」
「ワシたちの中で1人、ワシたちが選んだ選ばれた者のうち1人だけなのじゃ」
「ん?よく分からないよ?」
「兎に角、詳しいことは、後じゃ!今の時点では選ばれた者が沢山いるのじゃ!」
「ほぅほぅ」
「それでこれから選ばれた者の中でもその資格があるかどうかの素質が問われる試練があるのじゃ!」
「試練?」
「急いで準備せねば!」
「試練って……ダメだよ私、他の子と同じとはいかないもん。病気で、身体を激しく動かせないの……。悪化しちゃう。今からでも他の子に」
「大丈夫じゃ!そこら辺は心配ないのじゃ」
「でも……」
「兎に角、変身じゃ!!」
「へ、変身!?」
「変身して、ワシと一つになるのじゃ」
「えぇぇぇぇぇぇ〜」
「ワシを手に乗せて、唱えるのじゃ」
〝ぴぴ〟がそう言うので、ココアは〝ぴぴ〟を、手のひらに乗せる。
「そうじゃ、初めじゃし、ワシに続いて復唱するのじゃ」
「う、うん」
「我が身に宿りし魂よ」
「わがみにやどりしたましいよ」
「古に伝わる魂と」
「いにしえにつたわるたましいと」
「融合せよ」
「ゆうごうせよ」
そう言うと、ココアの身体は眩い光に包まれた。
と同時に、身体が倒れていく。
全てが終わった時には
「何これぇぇぇぇぇぇぇ」
目の前に自分が倒れていた。そして、倒れている自分を見下ろしている。
「わ、わ、わ、私、倒れてるよ!!??」
「安心するのじゃ!魂が我が魂と融合し、一時肉体と離れてるだけじゃ! 今のお主は魂だけの存在。これで肉体と離れいるからのぉ、身体を動かしても害はないのじゃ!」
「そうなんだ。でも……。あれ?〝ぴぴ〟?」
見渡しても自分が倒れているだけで、〝ぴぴ〟の姿は見当たらない。
「ここじゃ!」
声のする方を見るとココアの胸元に可愛いうさぎのブローチがついている。
「えっ?〝ぴぴ〟」
ブローチを触る。
「そうじゃ。今、ワシの魂とココアの魂は繋がれているのじゃ!」
「なんか……嫌だな」
「なんと!これは選ばれた者にしかできないことなのじゃ!誇るといい!」
ココアはある変化に気付き、自分の身体を見渡す。
「お主、聞いておらんの。」
「パジャマを着ていたはずなのに」
頭には水色のベレー帽のような帽子にピンクベージュのうさぎの耳が小さく生えており、フリルの付いたブラウスの真ん中に青色のリボンと〝ぴぴ〟のブローチが付いている。
下は青色のフリルが沢山あしらわれたショートパンツに腰からは水色のオーガンジーの生地で作られた3段のフリルがスカートのようになっている。靴は今まで履いたことのない少し高さがあるショートブーツで、こんなのをいつか履いてみたいと思っていたものだった。
「かわいい〜」
ココアのテンションはそれだけで最高潮だ。
「そうじゃろう?ワシはこれでも〝ふぁっしょんりーだー〟と呼ばれているのじゃ!」
ココアは今までにない自分の姿に見とれている。
「兎に角こうしている暇はない、急ぐのじゃ」
「えっ?でも、これからどうするの?」
「行くのじゃ、我が〝かうんとりー〟、ワンダーラビリットへ」
「?どうやって?」
「それはこれから説明するのじゃ」
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