第21話 不安と勇気とココア

 ココアは突然、〝ぴぴ〟との繋がりを断たれ、どうしても不安の心に押しつぶされそうになっていた。

 自分の半分がなくなってしまったかのように……。

「〝ぴぴ〟!〝ぴぴ〟!」

 ブローチを何度も触るがの〝ぴぴ〟は起きる気配がない。

「私……どうすればいいの……? ゴールって言ったって、わからないよ……」

 ココアは周りを見渡すが、女王の力で先程までいた人々の姿は見えなくなり、目に映るのは不安な心とは対照的なパステルカラーの雲だけだった。

「こうしている間にも他の人達はゴールに向かっているかも……。急がないといけないのに……」

 ココアは行くあてのない心と一緒にに立ち尽くしてしまう。

「ダメ……。ここでこんなことしてたら、〝ぴぴ〟に怒られちゃう……」

 ココアはボソッと呟く。

「何をしているのじゃ、ココア!早くしないと、光のカラットを手にできないのじゃ……行動するのじゃ…………〝ぴぴ〟ならきっとこう言うはず!!」

 ココアは自分を奮い立たせると、近くの雲に乗り移る。

(まずは雲を使って、下に降りよう)

 風に乗り動く雲をタイミングよく捉えながら、今いる雲よりも低い位置にある雲に移動する。


 ココアは雲を使って移動していたが、あるところまで来ると、下にある雲の数は減っていき、今いるココアの雲より低い位置にある雲はなくなっていた。

(どうしよう……。……もう移動できないよ……)

 ココアは必死に周りを探すーーー

 すると、今いるココアのところからだいたい100m離れたぐらいだろうか……、眩しく光っている何かを見つけた。

 光っているそれが何かはわからない。でもここで立ち尽くしていたって何も始まらないと考えたココアはその場所に近づき、ポンポンポンと雲の上を進む。

 光っていたそれは、雲だった。

 その雲はいままで移動してきた雲とは違って、沢山のカラットの欠片を散りばめており、そのカラットの欠片が太陽の力を借りて光っていたのだった。

(この雲、今までの雲とは違って大きい……何かあるのかな……)

 ココアはカラットの欠片を散りばめた広い雲の上を行く当てもわからないままとりあえず歩いてみる。

 前ばかりを気にしていたココアはその足元に空いた穴に気付かず、ココア1人は簡単に通れる穴に落ちてしまった。

「いた……痛くない?」

 驚く暇もなく、落ちた先はまたもや、泡立て器で膨らませたメレンゲのようなフワフワな雲の上だった。

 そして、ココアの目の前にはキラキラとその色を誇らしげに輝かせ、緩やかにカーブを描く虹が広がっている。その存在感たるや、オーラという不確かなものを纏まとっているようにも見えた。

「わあぁぁ!」

 ココアは間近に見る虹に感嘆の声を漏らしながら、カーブを描いている虹を覗き込む。

 虹のカーブはどうやら、下に向かって続いており、ココアは迷うことなく、虹の上に飛び乗り、その上を歩いて行く。

 ココアが2、3歩足を進めると、音が鳴っていることに気付く。

 歩く度にド・レ・ミ〜、ド・レ・ミ〜と歌う虹にココアは胸を踊らせ、1歩、2歩と出していた足は今までの倍以上の速さで入れ替えを繰り返す。

 これが、見えない相手との競争でなければ、ココアはしばらくこの虹で遊んでいただろう。

 でも今はそれどころではない。

 光のカラットをゲットして、何よりも〝ぴぴ〟と話たい。その気持ちが強かった。

 ある程度、下ってきたところで虹はカーブを描くのをやめ、真っ直ぐと伸びた道へと変わった。

 ココアは迷うことなく、一直線に続く虹の道を走って行く。

 すると、虹の道が終わる頃にはまたもカラットの欠片を散りばめたふわふわの雲が目の前に広がった。

 ただ今回はそれ程広くもなく、ココアは雲の上にポンと降り立ち、そのまま進むと、一つの扉に行き着いた。

 雲の上にポツンと立つ、板一枚の茶色のその扉はどこからどう見ても異様だ。

 ココアはその扉の後ろに周り込むが、何もなく、ただ立っているだけ

(?)

 しばらく、雲の上を歩き回るが、あるのは走ってきた虹だけで、先に続くものは何一つ見つからない。目の前の扉以外は……

 中を少しだけ覗いてからと、ココアは金古美色をしたドアノブに手をかけた時だった。

 その扉に文字が勝手に刻まれて行く。

 そう。扉が意思を持って、ココアに語り掛けるように

 ーーいらっしゃいませ、ココアさん。どうぞ中にお入り下さいーーー

「……怖い……」

 ここがワンダーラビリットということを認識していなかったら、一種のホラーであろう。

 ココアは更に不安と恐怖と戦う。もし扉を開けて入ったとして、そこから何が起きるのか想像が出来ないからだった。

(〝ぴぴ〟が目を覚ましてくれたら、少しでも気が紛れるかも……)

 そう思い、ブローチを触るが、〝ぴぴ〟が目を覚ますことはない。

 心の拠り所である友達が目を覚ますことがないとわかると、ココアはゴクリとツバを飲み込み扉を開けた。

 これから何が起きるのか、1人でその恐怖と戦いながら……

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