第20話 2度目のワンダーラビリットとココア

 見渡す限りの青空、オーロラ色に輝く花畑、その上を軽やかに飛ぶ、赤や緑、青色のビビットカラーのカラフルな蝶。

「わぁ〜……、私また来れたんだ!!」

 ココアは再びワンダーラビリットに来ていた。

「ココア、わかっているのか!これから、光のカラットの試練があるのじゃぞ? 呑気に堪能している場合じゃないのじゃ!!」

 すでにココアの胸元のブローチになっている〝ぴぴ〟がワンダーラビリットを駆け回るココアに忠告する。

「わかってるよ!でも久しぶりで……やっぱりいいね。ワンダーラビリットは! とてもワクワクする!!」

 ココアはフワフワと飛んでいく花びらを追いかけて両手で捕まえる。

 手を開くと中からは1枚のオーロラ色に光る花びらが姿を表した。

「早くお城のほうへ向かうのじゃ! 遅れたら試練自体受けさせてもらえないのじゃぞ?」

「今日は早く来たから、もう少しここにいても……」

「ダメじゃ!!!!早く行くのじゃーーー!!」

「もう……わかったよ……。行けばいいんんでしょ」

 ココアは肩を落としトボトボとお城に向かって歩く。



「わぁ〜!!」

 お城に着いたココアは感嘆の声を上げた。

 お城の真上には無数の宝石が散るように花火が盛大に何発も打ち上げられている。

 花火が打ち上がる度にココアの心臓も一緒に〝ドン!!〟〝ドン!!〟と跳ね上がっていた。

 そしてお城からは遥か遠くまで伸ばされたシルクのような細い紐は沢山の旗で飾りつけられており、それは丁度、ココアの頭の上でクロスされていた。

 ココアはそのまま顔を上げ旗を見る。

「旗に何か描いてある……。うさぎさんの絵……? あっちは……たくさんの星が描いてある……」

「それはワンダーラビリットのそれぞれの地域を表す旗なんじゃ」

「えっと……、じゃあ、私達の世界の国旗みたいなものだね」

「そうかもしれないの」

「それにしても人が沢山だね……最初の試練の時よりは少ないけれど」

 ココアは城の前に出来ている人集りに近づいて行くと、「おねーちゃーん!!!」と呼ぶ声に反射的に体を向けた。

 振り向いた先に居たのは初めてワンダーラビリットに来た時にココアが助けた男の子だ。今日も金髪の柔らかい糸のようなの髪がワンダーラビリットの太陽の光を受けてキラキラと輝いている。

 男の子は手を振ってココアに駆け寄ってくる。ココアはしゃがんで男の子の目に合わせた。

「お姉ちゃん!!」

「あっ!あの時の」

「うん!あの時はありがとう」

「ううん。元気そうでよかった。ここにいるってことはカラットが集まったんだね」

「うん!」

「そうだ!えっと……私は新道ココアって言うの……」

「僕はクリムって言うんだよ!」

「クリムくん!!よろしくね」

「うん!よろしくお願いします」

「一緒に頑張ろう!!」

 和やかな会話が弾む中に〝ぴぴ〟からの釘が刺さる。

「ココア、光のカラットは10個のみなんじゃぞ!この試練は誰が10個のカラットを手にするかの戦いじゃ! 一緒に頑張ろうなんて生温いこと言っておると他の誰かに取られてしまうのじゃ!」

「もう!クリムくんと私で光のカラットを手にしたら問題ないでしょ!」

「ココアお姉ちゃんどうしたの?」

「今、私の友達が話掛けてきたの」

 ココアは自分のブローチを触りながらクリムに言う。

「あぁ!僕の友達は〝とと〟って言うんだよ」

「〝とと〟ちゃん!!へぇ〜、会ってみたいなぁ」

「うん!!今度、会ってみて?僕もココアお姉ちゃんの友達に会ってみたい!」

「なんで、変身していると自分にしか声が聞こえないんだろう。ワンダーラビリットにいるんだし、皆に声が聞こえたらいいのにね……」

『これより光のカラットの試験を開始する』

 近くのスピーカーから聞こえた声に、反射的に話を止めて、姿勢を正すとココアはその声の主がいるであろうお城のほうに体を向けた。

「あっ!女王様!!」

「しっ!静かにするのじゃ!!」

 お城のバルコニーに立ち、パッションピンクのドレスを身につけ、うさぎの仮面をつけたワンダーラビリットの女王はにんじんの形をしたマイクを使い、その先を続ける。

『光のカラットは最初にゴールに着いた10名の者に授けるとする』

(ゴール……?ってことは競争かな……)

 すると女王は右手を静かに肩の高さまでゆっくりと持ち上げると同時にココアの体が少しづつ宙に浮く。

「うわぁ!」

 周りを見ると、自分だけではなくクリムも……集まっていた人達も宙に浮かんでいた。

「ぼ……僕、どうなっちゃうの……」

 クリムは不安からか今にも泣き出しそうな声を出していた。

「クリムくん、大丈夫だよ!頑張ろう!」

「う、うん……」


 まるで自分自身がシャボン玉になったようにふわふわと風に乗り、ワンダーラビリットの空へと上がっていく。

 ワンダーラビリットのピンクや水色、黄色といったパステルカラーのふわふわな雲を見下ろすところまで来ると、シャボン玉が割れたように突然、その身を雲の上に投げ出された。

「きゃあ!」

 ココアはクリムの姿を探すと、どうやら近くの雲の上に落ちたようだった。

 クリムの姿を確認して、ホッと胸を撫で下ろす。

『試練はそこから始める。ゴールは私の城の門だ。いち早く門を通り抜けた者から合格だ。なお、光のカラットは10個。11人目以降は不合格とし、10人が決定した時点で残りの者達は下界に強制送還とする』

 ホッとしたのも束の間、女王の声が空の上にも響き渡ったり、再び身を引き締め直す。

『なお、試練中は妨害を防ぐため、お互いの姿は見えないものとし……』

 女王のその発言で、近くにいたクリムは突如、姿を消し、周りを見渡すと、所々にいた人々の姿も消えていた。

『仲間の力も使えないものとする』

 すると、変身してブローチになっていた〝ぴぴ〟との繋がりが突如、切れたような感覚に陥り、胸元のブローチを見れば、いつもは開いている〝ぴぴ〟の目が今はしっかりと閉じられていた。

「えっ!?〝ぴぴ〟!?〝ぴぴ〟!?」

 ブローチを何回触っても〝ぴぴ〟からの返事はない。

『そして、この試練を通して、新たに自分というものを見つめなおしてほしい』

 言葉尻、女王は薄く笑った。

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