第30話 記憶と金曜日とココア☆ココアの記憶
ココアがおじいちゃんと、おばあちゃんに「さよなら、また来年ね!」を言ったのは、ほんの1時間前だ。
1時間前だと言うのにまだ、心はおじいちゃんとおばあちゃんの家に置いてきているような、そんな寂しいような名残惜しいようなそんな気分に浸りながらも車はどんどん、本来の自分の家に向かって走行を続ける。
緩やかなブレーキで止まった車は次の青信号も渡れないだろう。
お母さんの「時間掛かりそうね」と言った言葉を心の中で反芻するようにココアは窓の外を見た。
近くの歩道をこの距離からでも目を引く、絵画の中からそのまま飛び出してきたような金髪の少年が歩いている。
少年はまだ小さく、少年というよりは男の子という表現のほうがしっくりとくる、5、6歳くらいだろうか。
ココアは目でその男の子の後を追う。走ってどこかに向かっているようだ。
(あの男の子どこかで……?)
その男の子は自分よりも遥かに背のある女の人に走って飛びついた。女の人はブロンドの長い髪だが、どこか、その男の子と似てる。
ココアは自分の胸を抑える。
(これが、心の記憶だったりするのかな……)
自分の顔が自然とほころんでいくのを感じる。
ただ、ただ、感じてしまったのだ。
よかったね、と……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます