第3話 出会いとココア

 いつも通り、ココアは自分専用に用意された味の薄いご飯を食べ、お風呂から出て自室でゆっくりしていた。時計の針は9のところに近づきつつあり、そろそろ寝る時間でもあった。

 4月だというのに今日の気温は夏日近くあり暑かったせいか、夜でも2階にあるココアの部屋は暑い。そのため開けていた窓を閉めようと立ち上がった時だった。

「えっ?」

 何かが凄い勢いでこちらに向かって飛んでくるのが見える。

 〝コツン〟

「いたっ」

 それはココアの額にぶつかって、部屋のカーペットの上に落ちた。

 ココアは額を摩りながら、それを拾う。

「何?これ?うさぎ?……のぬいぐるみ?とトランク?」

 それはピンクベージュ色のうさぎのぬいぐるみと15cm程の茶色のトランクだった。ぬいぐるみのほうは右耳に水色のリボンが結んであり、首にはフリルの白い丸襟が首輪のように付けられていて、その真ん中には小さい水晶のような綺麗なガラス玉がちょこんと付いている。そして、腰の部分には同じく水色のオーガンジー生地で作られた3段フリルがスカートのように着せられていた。

「かわいい〜でも、なんでだろう?誰かが投げてきたのかな?」

 窓に近づいて下を見ても、少し身を乗り出して見てみてもそれらしい感じはなかった。

「? でも、こんなに可愛いなら、誰かが大切にしてるものだよね……。これも明日交番に届けよう!」

 ココアは窓を閉め自分の机の上にトランクとうさぎのぬいぐるみを大切に置く。

「おやすみなさい。あなたを大切にしているお友達に会えるといいね」

 そう言って、ココアはベッドに入った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る