第9話 〝ぴぴ〟とココア

「う〜〜ん」

 窓から射す朝の光がカーペットの上で寝ていたココアを起こした。

 目を開くと見慣れた天井が目に入る。

「夢?」

 そうここはココアの自室だった。

 ふと机の上に目をやれば、昨晩置いたうさぎのぬいぐるみとトランクもなくなっている。

「夢だったのかな……?」

 カーペットの上で寝ていたせいかいつもよりだるい気がする身体を起こし、一日を始める準備をする。


 それからはココアはいつもと変わらない朝、学校、放課後を過ごした。

 ただ、「変な夢を見た」それひとつがずっと心のどこかに引っかかりながら。


 部屋のベッドに横になりながら、ココアは手を握ったり、開いたりする。

(変な感じ。夢の中の出来事だったのに、感覚が残っている気がする)

 そんなことを考えていた時だった、日が落ちて薄暗くなってきた窓を〝トントン〟と叩く音が聞こえた。

「?」

 ガラス越しに見ても、自分の顔が映るだけで、外の様子はよく見えない。恐る恐る窓を開けると、ココアに向かって勢いよく何かが飛び込んできた。その衝撃で尻もちをつく。

「いたっ」

「ココア!」

「ん?〝ぴぴ〟!?」

 それはピンクベージュ色のうさぎのぬいぐるみ〝ぴぴ〟だった。

「夢じゃなかったんだ……」

「何を言っているのじゃ!お主が少年にリボンを渡してしまったから、ちょっとの間それを調達しに行っていたというのに。まったく。お主はこれからワシと共に夢を叶えるため、カラットを探すのじゃぞ」

「うん」

「これから沢山の者がカラットを探すのじゃ。カラットを全部集めて、何回も行われる試練を超えて、最後の1人に残って、やっと夢が叶えられるのじゃ」

「えええぇぇぇぇ〜聞いてた話と違うよ」

「言ってなかっただけじゃもん」

「カラットを集めれば願いが叶えられるんじゃなかったの?」

「そうじゃ!カラットを集めて最・後・の・1・人・に・な・れ・ば・じゃ」

「後出しジャンケンみたい」

「とりあえず、これからワシと一緒に頑張るのじゃ! えいえいおーじゃ」

「エイエイオー?」

「そうじゃ、えいえいおーじゃ」

「エイエイオー!」

「〝えいえいおー〟」

「エイエイオー、ふふっ。ねぇ〝ぴぴ〟これいつまでやるの? ねぇ?」

 この日、ココアと〝ぴぴ〟の楽しそうな声が止まることはなかった。

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