第8話 迫る時間とココア
(〝ぴぴ〟に我儘を聞いてもらった以上、最後まで諦めないんだから)
ココアは先程まで居た、オーロラ色の花が咲いていた場所でカラットを探していた。
試練も最終局面まで差し掛かっているためか、いつから居たのか確かではないが、女王に仕える花の精霊がココアの近くで様子を見に来ていた。
花の精霊は頭に鮮やかな黄色いタンポポの花を咲かせており、その花びらのスカートを履いていた。
花びらはワンダーラビリットの風を受けて、ソヨソヨと揺れている。
精霊の大きさはココアの掌くらいだ。
少し前に「30分前」とか消え入りそうな声で言ったっきり、その後は口を開いていない。
すると「5分前」と花の精霊がココアに伝えた。
「お主、もう無理じゃ」
「ううん。諦めない、だってまだ5分もあるもん」
「でも、あれから見つけられたのはたったの5個だけじゃ」
「……」
〝ぴぴ〟にそう言われてもココアは手を動かすのを止めない。
「5秒前」
「ありがとうなのじゃ」
「4」
「最後の最後まで頑張ってくれて嬉しかったぞ」
「3」
「ワシの夢もお主の夢も叶えてやることは出来なかったが」
「2」
「いい思い出になった。お主のせいにしておったが、出遅れたのは気絶をしていたワシのせいでもある。気に病むな」
「1」
「これで、バイバイだが、元気に過ごすのじゃぞ」
「0」
と、精霊が言ったのと同時に精霊はその姿を小さな巻物に変えた。
ココアはそれを手に取る。
「結果発表じゃ、見なくても分かる不合格じゃ」
ココアは巻物を開く。
「ココア殿 そなたの集めたカラットの欠片の数は5個。今回、素質を認める者はカラットの欠片を30個以上集めた者とする。よって、そなたは不合格」
「言った通りじゃ……」
「だが、今回より新たに設けることになった特別賞の枠をそなたに授ける。少年を助けてくれた事感謝する。ここにそなたの素質を認める。ワンダーラビリット女王……だって」
「な、なんじゃと!!」
「〝ぴぴ〟これって!」
「やったのじゃ」
「私、やったの?」
「ああ……やったのじゃ!」
「ほんと?ヤッター!!」
「ココア、感謝するぞ!これからも、その……よろしく頼むぞ」
「〝ぴぴ〟はじめて、ココアって呼んでくれたね」
「そ、そうじゃったかの?」
「うん、よろしくね」
「そろそろお帰りの時間です」
すると精霊は巻物から再びタンポポの精霊の姿に戻り、ココアのおでこを触った。そして、ココアに理解出来ないような聞き取れないようなハッキリしない言葉の羅列を唱えると同時にココアの意識がどんどん遠くなっていく。
「あ……れ?」
ぴ……ぴ……
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