第2話 運命の席決め

「えっと...好きな食べ物はそばとかかな。ざるのやつ。」

 その日のホームルームはクラスの人(主に男子)による唯への質問攻めで終わった。上野は寝た様に見せかけて地味に話をしっかりと聞いていた。

 他人に(特に異性に対して)あまり興味のない上野にとって、一目惚れは初めての経験だった。ボーイッシュな感じのショートヘアーも、涙ぼくろも、声も仕草も、全てが上野のどストライクに決まったのを感じた。

「はいはい。連絡することもあるし、あとは個人的に聞いてね。席は...」

 上野の鼓動が速くなる。なぜなら、上野の席は1番窓側の後ろ。隣は空席。絶好のチャンス到来。

「廊下側の1番後ろ。田中の隣ね。周りの人たちはいろいろ教えてあげてね。じゃあ今日の連絡だけど...」

(おいいいいいいいいい!!!!!)

 上野は心の中で盛大にツッコミをかました。しかも隣の席の田中は2年生ながらもサッカー部のエース、性格も良いと評判で、頭もいい。学年で1.2位を争うほどのイケメンで彼女なし。裏のあだ名は出木杉くん。ブスではないが雑誌に載るほどイケメンなわけもなく、成績もそこそこの上野には勝ち筋なんてない。残念上野。

 ホームルーム終了のチャイムとともに、上野の口からは過去1番のため息。憂鬱な気分のまま1日が終わった。

 その日は委員会やら先生の手伝いやらでだいぶ遅くなってしまった帰りの電車の中でイヤホンをつけながらウトウトしている上野の頬に何かが当たる。

「...よ。......だよ。」

 遠くで声が聞こえる。

「終点だよー!」

 イヤホンが外れた耳に入ってきた急な大声にびっくりして起きた上野の目の前には...

「あれ、北...川さん!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る