第25話 花火と姉妹と恋

 もうすぐ午後7時になる。屋台は大体回り終え、3人は近くの公園で休んでいた。

「疲れたね〜。でも、やっぱりお祭りはいいね」

「お前達って、人苦手なくせして人混みは大丈夫なんだな」

「ええ。だってこっちが向こうを見なきゃ、目が合うことなんてないもの」

「てか、本当に危ないから離れるなって。何されるか分かんないよ?」

「私達可愛いもんねー」

 唯がニヤニヤしながらふざけたように言う。

「うん」

 何気なく言ってしまった一言に自分で気づき、上野は耳まで真っ赤になった。いや、3人全員がそうなっていた。

「いや、今の冗談だからね!!まあ、直也は私達のことそう思ってるかもしれないけど」

 また唯が冗談めかして言う。

「やっぱ前言撤回」

「それはそれで酷いよ!」

「あっ、そういえば、7時半から花火あるんじゃなかったかしら」

「そういえばそうだ!早く行かないといい所取られちゃうよ」

「じゃ行くか」


 祭り会場から少し離れた所にある土手で見ることになった。

「ここならあんまり人も来ないし、花火も良く見えそうだね」

“あと5分で花火が打ち上がります。会場の皆様、ぜひご覧下さい。繰り返します...”

 という、花火の予告アナウンスが流れた。夜の7時半ともなると、少しずつ気温も丁度良くなり、気持ち良い風が吹いてきた。


“カウントダウンを始めます。10、9、8...”

「さあ、上がるぞ」

 その時。上野の右袖を皐月が掴んだ。

「直也。私ね...」

“3、2、1...”

「あんたのこと...」

 ドォォォォォォォン....

「えっ、皐月今なんて...」

 皐月の顔が真っ赤に染まる。

「皐月、顔真っ赤だよ?」

「うるさいわね!花火の色よ!」

“あんたのこと、好きなの”

 皐月の人生初の告白は、花火の音にかき消された。

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