第13話 中間テスト④
鐘の鳴り終わりと同時に回答用紙に名前を書く。
"北川唯"
なぜ直也に対してあんな勝負を申し込んだのか、自分自身でも不思議に思う。前の学校でも、決して良い成績とは言えなかった。もし負けたら直也はどんな要求をするだろうか。そんな雑念を持ちながらテストを解いていた。思うようにペンが走らない。半分ほどを解いたところで時間を確認する。
(うそ!?あと15分!?このままだと負けちゃう。いくら直也だって高校2年の男の子だもんね。その...え、エッチな要求されちゃったらどうしよう!?)
キーンコーンカーンコーン.....
全てのテストが終わり、直也の席へ行く。
「どうだった?」
「まあ、ほどほどだよ」
(どうしよう...自分から言っといてなんだけど、もう言うしかない)
「直也、自信なかったら降りても良いよ?」
「はあ?え、北川さん自分から言ってきたんだよね?」
「そ、そうだけど...私は自信あるからね!直也が決めて良いよ」
「じゃあやる」
「そ、即答...」
「もしかしてだけど、北川さん、やばい感じ?」
直也は薄ら笑いを浮かべて言った。
「やるならそれでいいけど、いいんだね?」
唯も返す。
「確認するけど、勝った方が負けた方になんでも一個言うこと聞くんだよね?」
「う、うん。そうだよ」
直也はまだ薄ら笑いを浮かべている。
(どうしよう。私、付き合ってもない人としちゃうの?)
そして3日後。テストが全科目返ってきた。放課後の教室で、直也と唯は緊張感に包まれていた。
「じ、じゃあ5教科の合計点でいいよね?」
「うん」
「よし、国語から出そ」
『せーーの!!』
机の上に2枚の紙。一方は68点。もう一方は52点。
「よっしゃあ!!!」
歓声をあげたのは直也だった。
「ま、まだ1教科めだから!」
「じゃあ、次数学ね」
『せーの!』
「しゃあ!」
数学も直也。これで2-0。
「ま、まだ...」
「あのー、北川さん?」
「うう...」
唯は顔を真っ赤にしてふてくされている。
結果は5-0。直也の圧勝だった。
「北川さん?」
「もう!分かってたよ!こうなることなんて!」
「じゃあなんでこんな対決申し込んだの...」
「なんか言いたくなっちゃったの!」
直也は窓の方を見て顔を隠している。
「直也、どうしたの?」
「いや、な、なんでもないよ」
「ね、どうするの?」
「え?」
「その、言うこと聞くっていったじゃん」
「あ、そう言えば」
(大丈夫だよね、さすがに)
「お願いがあるんだけど」
唯の鼓動が一気に速くなる。
(でもでも、直也だって高校生だし、そういう欲求もあるよね。でも同級生にそんなこと...)
「ホテルに...」
その瞬間、唯の鼓動が限界を突破した。
「いっいや、私たちってまだお付き合いもしてないし、なにより高校生だしさ!気持ちは分かるけど、まだそういうのは早すぎるかなって!」
「え、ちょ、ちょっと...」
「だからね、もし、もしだよ!?その、結婚とかしたら、そういうのはやろ!?」
唯は直也の声も聞かず言った。我に返り、直也を見ると茹でダコのようになっている。
「え?」
直也と目が合う。
「いや、だから今度、北川さん家のホテルにちょっとお安く泊まらせてもらえないかなと思ったんだけど...」
「泊まる?」
「うん」
さっきまでの自分の言動を思い出して、唯の顔が真っ赤になる。
「えっと、北川さん?」
「ごめん!!忘れてえええええ!!!」
そう言って唯は走り去った。
「危なかった...可愛すぎだろ......」
こうして、唯vs直也の中間テスト対決は直也の勝利で終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます