第14話 未来図①

「あそこのス○バで勉強してたんだね」

 付き合ってから5年目の彼女は駅前にあるス○バを指差して言った。彼氏は駅前にちょこちょこ来るせいか、変わった風景を見ても特に反応はなかった。2人は歩き出す。

「うん。あの頃はいろいろ必死だったよ」

 少しだけ強く彼女の手を握る。

「ていうか、あの田中君が女子相手にそんなこと言うんだね。なんか凄い優しいから......特に女性に対してだけど」

「ははは。確かにね。でも、いい人なんだよ。分かってると思うけどさ」

「うん。分かってるよ。でも、初対面の人達は気づかないだろうなー」

 彼女も握り返す。気づくともう彼氏の家に着いていた。

「ねえ、もっと聞かせてよ。私の知らない話。今日は泊まってくからさ」

「そうだなあ...じゃあ夏休みの話でもしようかな」

 猛暑が続く8月の夜。エアコンの効いた部屋で彼氏はまた語り出した。なんてことない、どこにでもいる高校生の話を。

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