第33話 波乱の予感

「直也、その子誰?」

 少し経って屋上へやって来た唯は、入ってくるなり、若干不機嫌な様子を見せた。鈍感な上野は、そんな唯の心情にも気づく素振りも見せない。

「紹介するよ、唯。この子は小田切美奈ちゃん。俺と同じ中学出身なんだよ。中学時代は何かと一緒になってそこそこ仲よかったんだよ」

「そこそこ?1番仲よかったじゃないですか〜」

 からかうように笑いながら美奈は言った。

「1番...」

 さらに唯の機嫌が悪くなる。と言うよりは、嫉妬の気持ちが大きいのだが。

「美奈ちゃん。からかわないで」

「からかってませんよ?一緒にあんなことやこんなことした仲じゃないですか〜」

 またからかうように笑いながら美奈は言った。

「あんなことやこんなこと...」

 見る見るうちに唯の頬が膨らんでいく。

「直也。本当にその子とは何にもないの?」

「なんでちょっと怒ってるの、唯...。何にもないよ。特に大したこともしてないでしょ、美奈ちゃん」

「ふふふ。やっぱり先輩面白いです。そういう所、私好きですよ」

「何言って...」

 上野の顔が赤くなる。

「ふーん...。ま、いいや。せっかくの学祭なんだからさ、遊び行こうよ。誰も誘ってくれない君に、私が付き合ってあげる」

 その笑顔に、上野は完全にKOされた。

「......」

 上野が何も言い返せないのは、もちろん照れているからである。

「いやいや、私の方が先に誘ったんですよね?お化け屋敷行きましょうって」

 こちらは、上野の腕に寄り添って攻撃してくる。そして、唯と目線が合い、2人の間でバチバチと火花が飛ぶ。

「直也!!!」

 唯が上野に向かって叫ぶ。

「えっ」

「直也先輩!!!」

「どっちを選ぶの!!?」

「どっちを選ぶんですか!!?」

 2人の声が被る。

「なんでこんな漫画みたいな展開になったんだよ...」

 上野は呟いた。

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