第34話 いたずらっ子

 あの後、唯と美奈は上野を賭けてジャンケン対決を始めた。

「美奈ちゃん、一回勝負だからね?」

「分かってますよ、唯先輩。ズルしないでくださいね?」

「ジャーン、ケーン、ポン!!!!」

 2人の手が出る。勝ったのは...



「直也先輩、お化け屋敷行きましょうよ」

「良いよ。3つくらいやってるとこあるけど、どこ行く?」

「んー...3年生の方行きたいです」

 上野にとっても少し不本意ではあったが、中学の時に色々と仲の良かった後輩だ。久しぶりに遊ぶのも悪くないと思った。



「さーちゃーーーん」

 唯は図書館にいる皐月に抱きついた。

「唯!何してんのよ。私とのジャンケンで勝って直也と学祭回るはずでしょ?」

「それが.....」


「直也と同中の後輩に取られた!!?」

「うん...」

 唯はバツが悪そうに縮こまっている。

「何してんのよ。あんたが取り返しに行かないなら、私が行ってくるけど?」

「ダメダメダメ!!だけど、直也、ちょっと嬉しそうだったんだもん...」

「もしかして、準備期間に唯が直也に聞いた時に言った好きな人って...」

「あの後輩ちゃん!!?」

「うかうかしてらんないわ、私は行くからね」

 そう言って皐月は飛び出していった。

「待ってよー!」

 唯も続いて飛び出そうとした瞬間、窓の外の光景が目に飛び込んできた。そこにいたのは、あの後輩ちゃんと楽しそうにかき氷を食べる直也の姿だった。



「美味しい!あ、先輩の味も美味しそう!一口下さいよ〜」

「良いよ。これ結構オススメ」

 美奈は上野のかき氷を自分のスプーンで食べようとする。そして、一瞬の思考。

「美奈ちゃん?あげるよ?」

 そう言った上野の手に持っているスプーンを美奈はひったくり、かき氷を食べた。

「う〜〜〜ん。おいし〜」

「なっ!?」

「ふふふ。せーんぱい、間接キスですね」

 顔を赤くする上野を見る美奈は完全にいたずらっ子の目をしていた。

「先輩をからかうのやめろ。そう言うとこ、中学から変わんないな」

 癖になっているのか、赤くなる顔を腕で隠す。

「先輩こそ、照れ屋さんで鈍感なとこ、変わってませんね〜」

「...うるさい..」

「照れちゃって〜。可愛いな〜、先輩は」

「お化け屋敷行かないよ?」

「あ〜!ごめんなさい!行きましょう!」

「だから、先輩いじりはやめろって」

 上野は笑いながら美奈に言った。

「ふふふ。久しぶりに会ったからテンション上がっちゃって。ちなみに私、怖いの苦手なので、守ってくださいね?」

「はーいはい」

 2人はお化け屋敷のクラスに向かって歩き始めた。

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