第35話 私の恋敵

 ポケットから着信音が鳴った。

「もしもし」

『もしもし?こっちはいなかったわ。あとは中庭と3年棟ね』

 皐月からだった。

「分かった。私は3年棟行くから、中庭お願い」

『分かったわ』

 ツーツーツー...。電話は切れ、唯は携帯をしまった。いつものように、直也と遊べる。そう思っていた矢先に突然現れた後輩ちゃん。あの子を見た瞬間、自分の恋敵になる第三者だと直感で分かった。あの時、屋上で2人の様子を見た時、唯は自分自身が予想以上に嫉妬している事に気付いた。そして、上野の顔がフラッシュバックする。

「直也、やっぱりいつもよりも楽しそうだったな...」

 こんな事で嫉妬して、うじうじしている女の子なんて、直也は嫌いだろうか。ダメだ。こんな事を考えてる時点で、もう間違ってる。唯は考えた。そして、3年棟に行く足を止めた。

「直也は私の物なんかじゃない。今の関係が崩れるくらいなら、追う意味なんかないよね...」

 そう呟いて、唯は屋上へと向かった。



「なんか、ドキドキですね〜!」

 お化け屋敷の順番を待ちながら、美奈は上野に言った。

「俺、お化け屋敷とかあんまり得意じゃないんだけどな」

 頬をポリポリとかきながら、上野は言った。

「もう!そんなこと言ってるから、いつまでたっても頼りないんですよ!たまには男らしく“、俺がお前を守ってやるぜ”とか言ってみたらどうなんです?」

「言わねーよ!しかも、言ったら言ったで、“先輩キモいです”とか言うくせに」

「あ、バレました?」

 美奈はまたしても上野をからかうように小悪魔的な笑いを見せた。

「あ、次私たちですよ。守ってくださいね、せ・ん・ぱ・い」

 周りの人が聞いたら、のろけたカップルに見えるのかもしれない。それ程、美奈は可愛らしく、語尾にハートでも付いているのではないかと思う程の口調で言った。

「......先輩をからかうのやめろ....」

 上野は美奈の笑顔と、周りからの視線に顔を赤らめた。



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