第23話 デート...?
夏休みも残り僅かとなった8月後半。日に日に増していた暑さも少し落ち着き、ぬるい風が吹く。毎日シフトを入れていた上野だが、1日だけ唯に言われて休みをとった。窓から聞こえる小学生の声。揺れるカーテン。心地よいひと時を過ごしていた。
「おーーーーーーーい!!!」
半分寝かけていた上野を起こしたのは唯の声だった。
「北川さん!?ど、どうしたの?」
ズキン。
いきなりの登場にも、これだけ一緒にいれば顔の火照りを抑えることも出来るようになっていた。
「せっかくの休みなのに、何で部屋で寝てるの!?遊ぼうよ!」
「遊ぶって...どこで?」
「あはははは。実はね、今日休みにしてもらったのには理由があるんだよ。これ見て!」
と言って唯が出したのは、1枚のポスター。「夏...祭り?」
「そう!ここから3駅行った所でやるらしいの!行かない?」
夏祭り。最後に行ったのは小学6年の時だったか。中学からは、バイト三昧で頭の中から消えていた。
「行きたい...かも」
「だよねー!行こうよ!」
「うん」
「じゃあ、4時半にホテルの入り口のとこでね!」
そう言って唯は一階へと降りていった。
2人で夏祭り。これはもはやデートなのでは。いきなり上野の顔が熱くなる。夏祭りマジでナイス。
そんなことを考えている時だった。扉の開く音。
「北川さん?」
そう言いながら扉の方を見ると、そこには、
「皐月!?どうしたの?」
皐月が左下を見ながら部屋に入る。
「..........ん」
そう言って何かを差し出す。それには見覚えがあった。もしかして...
「今日、夏祭りがあるのよ。2人で行かない?」
「えっ......俺と!?」
「あんた以外に誰がいんのよ。どーせ一緒に行くような友達もいないんでしょ。この前のお礼でなんか奢るわよ」
「いや、その、北川さんと行く約束しちゃったんだけど...」
「えっ!?唯と!?」
「うん」
何かを呟いている様子だが、上野にはなんと言っているのか聞こえなかった。
「..............ゎょ...」
「え?」
「......わよ...」
「ごめん、聞こえないんだけど...」
「3人でいいわよ!!!!」
「うわっ!急に大声出すなよ...。てか、俺もう北川さんと行くって...」
「分かったわね!」
そう言い捨てて皐月は一階へと走り去った。
「デートが...」
上野は天井を見上げて大の字になって呟いた。
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