第41話 直也の気持ち
久しぶりに会った彼は身長が伸びていた。前は唯と同じ、165㎝ほどだったのに対して、今は180㎝はあるだろう。唯は話すだけで、見上げなければならない。
(直也は172㎝って言ってたかな...確か)
「唯ちゃんのおすすめの所ある?」
唯たちのいとこであるこの大柄な男、北川大輔(きたがわだいすけ)は、学祭のパンフレットを唯に見せながら言った。
「んーとね、うちの学校は演劇部とか、文芸部とか、文化系の部活が盛んなんだよね。ほら、昼から演劇部の劇あるし。ちょっと見てみたいかも」
「そっか。じゃあ行こう」
唯は大輔の楽しそうな顔とは裏腹に、少し寂しげな表情をしていた。
(直也は本とか好きなのかな?何が好きなんだろう......って、また考えてる。直也はあの後輩の子とかあんな感じが好きなんだよね、多分...。て言うか、男の子はみんなあーいうのが良いのかな)
「男の子ってやっぱりボディタッチとか多い方が嬉しいのかな?」
「えっ?」
「あっ!」
つい考えている事が口に出てしまい、唯は焦りの顔を見せた。
「ボディタッチか...どうだろ。好きな奴もいるんじゃないかな」
「そ、そっか...」
「ふーん...」
大輔は不敵な笑みを浮かべた。
一方上野は、皐月の所へと向かう途中である男と鉢合わせていた。
「零...?」
保健室のある東側の校舎から西側の校舎へと移動する時に通る渡り廊下は、東側の校舎に屋台が無いため、人通りが極端に少なかった。そこで目の前に現れたのは零だった。その表情は暗く、俯いたまま顔を上げない。
「どうしたんだ?具合悪いのか?」
「...が...」
「え?」
「お前が泣かせたのか...?」
と言いつつ、上野の胸ぐらを掴む。
「おい、何してんだよ!」
「保健室に皐月ちゃんいると思って向かってた時泣いてたぞ!?何かあったのかと思ったら後ろからお前が来て!なあ、お前か?お前が泣かせたのか!?」
「おいおい、何でそんなに怒ってんだよ?俺は何も...」
そう言いかけて、一瞬言葉が詰まる。
「....ごめん。何でこんな事してんだろうな、俺。.......一つだけ聞いて良いか?」
「うん」
「直也は皐月ちゃんの事、好きなの?」
「それも含めて、俺の話聞いてくれるか?」
上野は、先程皐月に告白された事、唯の気持ちが分からず、告白の返事と自分の気持ちとで葛藤している時に後輩に諭された事。そしてなにより、自分が好きなのは唯だという事を伝えた。
「俺さ、これから皐月に返事して、その後唯に告白するよ。応援してくれると...嬉しい」
「......そっか。本当にごめん。早とちりで。俺さ、今まで彼女とか本気になったこととか無くてさ。こんなに誰かの事をずっと考えることなんて無かったから」
「うん。知ってるよ」
「でも、最初から唯ちゃんの事が好きだったなら何で俺に協力出来ないって言ってたの?だから俺、直也も皐月ちゃんが好きなのかなって」
「あー、うん。零には知っといてもらいたいかな。でもその前に、零は本気で皐月の事を大切にしたいと思う?何があっても皐月を守って好きでいられる?」
「誓うよ」
「そう言うと思った。実はね...」
上野は皐月達の過去について大まかに話した。
「なるほどね。そう言うことか。ならあまり焦ったりしない方が良いよね。今はまだ直也のこと想ってるだろうし」
「じゃあ、俺行くよ。お互い頑張ろうな」
「good luck。祈ってるよ。直也はいい奴だから。少なくとも俺と雄一は知ってるよ」
それを聞いてから、上野はまた皐月を追った。
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