第3話 波乱の幕開け

「北...川さん!?」

 大声の聞こえたすぐそこには今朝、自分のクラスにきた転校生の北川唯がいた。

「やーっと起きた!つっついても声かけても起きないから困ってたの。ここ終点だけど、大丈夫?」

 あははと笑いながら喋る彼女を困惑しながら見つめる上野。

「あのー、大丈夫?君、クラスの1番後ろの席の人だよね?あんまり見つめられると恥ずかしいんだけど...」

「あ!ごめん!なんかいろいろとびっくりしてて...」

 寝過ごして終点まで来てしまったことと目の前にいる一目惚れした女の子のダブルパンチで上野の頭はパンク寸前だった。

「その顔は寝過ごしちゃって焦ってる感じだね。家の人に迎え来てもらった方がいいんじゃない?」

「俺、実は母親しかいないんだけど、今日仕事で朝まで帰ってこないんだよね。北川さんはここら辺詳しかったりする?泊まれるようなとこないかな?」

「そうなんだ。ごめん、話したくないこと話させちゃったかな」

「いや、大丈夫だよ。それより泊まれるようなとこ知らないかな?」

「それなら、私に任せて!」

「え?」

「あと、唯でいーよ。クラスメイトなんだから、仲良くしようよ。君の名前は?」

「上野...直也」

「直也ね。私に着いてきて!」


 唯に連れられて着いたのはどこにでもありそうな小さなビジネスホテル。

「ここ、私のパパが経営してるの。事情を話して、安く泊まれる様にパパに頼んでみるよ。」

「本当に!?マジで助かったー」

 唯はニコニコ笑顔のまま、フロントの奥へと入っていった。入り口から入ってすぐ脇にあるソファに腰掛けながら、この急展開を整理する。またしても頭がパンクしそうになる。10分程で唯が帰ってきた。その後ろには、想像していた優しそうなお父さんとは正反対のヤクザの様な大男。

「紹介するね。私のパパ」

「あ、どどど、どーも。今日からクラスメイトになった上野直也です」

 少し混乱しつつ、挨拶をする。と、

「ようこそ!我がホテルへ!唯から事情は聞いたよ!今日はここに泊まるといい。これから唯がお世話になるクラスメイトだ。代金もいらないよ!」

「はい?」

 予想とは裏腹の高めの声。アゲアゲのテンション。昔やったドラ○ンクエストの宿の主人みたいなそのノリに困惑しつつ、上野は部屋に連れていかれた。



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