第4話 痛み
「ふあああああ.....」
鳴った目覚ましを止め、時間を確認。6時半ピッタリ。そこから水で寝癖を直し、顔を洗いながら昨日起きたことを振り返る。
「漫画かよ...」
「何が漫画なの?」
「うわあああああ!!」
心臓飛び出るわ。また心の中でツッコミをいれる。洗面台の鏡に唯が映る。
「あはははは。直也のびっくりするところ面白いね。昨日の電車でもそうだったけどさ」
「そりゃあ朝起きて顔洗ってる隙に後ろに人いたらびっくりするだろ...ってか、なんで中にいるの!?」
「スペアキーって知らないの?」
「一応客っちゃ客なんだけどな...」
「ごめん、ごめん。電車の時間言い忘れてたからさ。もし昨日みたいに寝過ごしてたらまずいなーって思って。」
「ていうか、この時間にここにいるって、ホテルで生活してるの?」
「あはははは。違うよ。ホテルのすぐ裏に家があってさ。いつもはそこで過ごしてるよ。じゃあ、朝ごはん用意してあるから。出て右の食堂ね」
朝ごはんは和食で、とても美味しかった。上野の母親が和食好きということもあって、上野自身も洋食より和食の方が好きだった。
帰ってないのでワイシャツや下着をどうしようかと悩んでいたが、ホテルにある予備のものを貰えたので、その心配もなかった。唯のお父さんに挨拶をしてホテルから出る。唯に連れられるままに駅に着いた。切符売り場に向かう時だった。
「ところでさ、なんでこんなところから通ってるの?もっと近くに高校あるよね?」
何気なく聞いた一言。ふいに足が止まった唯を見ると、その目には涙が見えた。
「あっ!いや、その、聞いちゃまずかったかな。ごめん!」
「いいの。直也は悪くないよ。大丈夫。早く切符買わなきゃ。電車来ちゃう」
微笑みながら言う唯を見て、他人に興味がなかった故に感じることのなかった胸の痛みを感じた。
上野たちの通う学校は校庭を通って昇降口に入るため、教室から校庭が全て見える。教室にいた田中の目に昨日来た転校生と仲良く登校する上野の姿が映った。
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