第37話 乱戦
上野の1日目は美奈と校内を回り、残りの時間はクラスのシフトで過ごして終わった。学祭も2日目へと突入し、学校内はさらなる盛り上がりを見せていた。上野のシフトは午前になっていて、雄一と零と一緒に仕事をこなしていた。
「はぁ...」
「お疲れだな、直也」
雄一が、ため息をつく上野を見て言った。
「まあな。なんか、最近色んなことで神経使いっぱなしだよ」
「本当に、買い出しに出たきり戻ってこないと思ってたら警察のやっかいになってるとか聞いてさ。マジで焦ったよ。詳しくは言えないんだっけ?」
「ああ、すまん。悪いことした訳じゃないからさ。なんかヤバイ噂出回ってるらしいけど」
「はぁ...」
2人が話すその横で、次は零がため息をついた。
「おいおい、お前もかよ。どうしたんだ」
雄一が零に聞く。
「いや、その...、俺の悩み聞いてくれるか?」
「うん」
上野と雄一は頷いた。そして、零は悩みを2人に打ち明けた。
「好きな人ができたぁ!!!?」
驚きすぎて叫んでから口を押さえたのは雄一。それもそのはず、零は女の子とよく遊んでいるのを見かけるが、未だに本気で好きになった子はいないはずだったからだ。
「本気で!?」
こっちは上野だ。
「うん...。結構最近なんだけど、前に体育で怪我して保健室行ったんだよ。その時にさ」
保健室...。上野は何かを察した。そんな訳はないだろう。そう思っていた矢先、上野の想像通りの名前が出てきた。
「北川皐月ちゃんなんだけど...」
その瞬間、上野は頭を抱えた。
「もしかして...」
上野が聞いたのと同時に、零は答えた。
「直也!お前、皐月ちゃんと知り合いなんだろ!?紹介してくれ!この通り!」
零は手を合わせて上野に拝んだ。
「いや、お前慣れてるんだから俺なしでも大丈夫だろ?」
上野はすかさず聞き返した。
「うーん、今までは付き合うとかそんなこと考えずに接してたからな。いざ好きな子が出来るとなると...」
「なんかムカついたわ」
雄一は零の発言に瞬時に反応した。
「俺も」
上野も続く。
「頼むよ!皐月ちゃんと同じクラスの子に聞いても、誰ともつるんで無いって言うし。お前しかいないんだよ!」
「て言うか、なんで皐月のこと好きになったんだよ」
「皐月!?お前、まさかそんな関係にまで発展してるのか!?」
「いや、別にそう言う訳じゃ無いよ...。で、なんでなんだ?」
「んーと、体育で怪我して、保健室に行ったんだけど先生いなくてさ。待ってたんだ。その時にふとベッドの方見たら、女の子寝てて。顔覗き込んだ瞬間に俺の心撃ち抜かれたんだよ...」
話を聞いた雄一が口を開いた。
「つまり、寝てる女子を覗き見したら可愛くて惚れた、と」
「人聞きの悪いような言い方すんなよ!」
零が返す。
「どっちにしろ、俺はちょっと協力出来ない。頑張ってくれ」
上野は、零を応援する気持ちを持ちつつも、夏祭りの時の皐月の反応を思い出し、協力を断った。
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