第8話 中間テスト①
5月も終わりに近づいてきた。この学校は3学期制で、1学期ごとに中間テストと期末テストの2つがある。もちろん、赤点補習付きである。上野は赤点こそないものの、優秀成績者とは言い難い。
「進路どうしよ...」
定位置の窓際1番後ろの席でふと呟く。
「何にするにしても、成績が悪かったら自由に選べないしな...」
とは言っても、母子家庭の上野は学習塾になど通えるような経済状況ではない。上野自身も正直焦っていた。その時だった。
「ねえ上野君。これから駅前で勉強するんだけどさ、よかったら一緒にやらない?」
そこには田中。そして横には身長が180はあるだろう色黒の青年が立っていた。
「あー!この人が上野君か!俺は秋本っていうんだ!よろしく!」
こっちも田中に負けず劣らず、上野とは関わらないようなイケメンである。
秋本零。テニス部の2年で成績は補習のレギュラーメンバーである。裏では女たらしという噂も出回っている。
上野は当然のごとく断ろうとしたが、ごめんと言いかけたその瞬間に考える。
(待てよ...秋本はまだしも田中の成績は学年トップ。これは千載一遇のチャンスなのでは!?利用するようで悪いけど、これでもし本当に仲良くなれれば一石二鳥だよな)
この間わずか1.8秒。上野は即座に答えた。
「一緒に勉強してもいいかな!?」
「うん!元からそのつもりだよ。上野君の話も聞きたいし」
上野は初めて話しかけられたあの時を思い出した。
『上野君って北川さんのこと好きなんだね』
あの光景がフラッシュバックする。次いで北川の笑顔。顔が火照るのを感じる。とっさに窓の外を見る。
ふふっと田中が微笑む。その横で秋本は不思議そうな顔をしていた。
「さあ、駅前行こう」
上野は高身長イケメン2人の後ろをついて歩いていった。
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