第9話 中間テスト②

約15分ほどで駅前に着いた。田中と秋本は迷うことなく駅前のス○バへと足を進める。友達と対して遊ばず、ましてや駅前など行くことがない上野はス○バに入ることすら初めてだった。

「抹茶フラペチーノのグランデで」

「俺はロイヤルミルクティーフラペチーノのグランデで」

(は!?何その呪文!?)

「上野君は何がいい?前一緒に遊べなかった時の分、今日奢るよ」

「いやいや、悪いって!」

上野にとってこの呪文によって買える代物は何か特別な日だけ飲めるような高価な物に思えたからだ。というか、ただ高かった。そんな上野の顔を見た田中は秋本に聞こえないような小さな声で上野に囁いた。

「上野君さ、バイトしてるでしょ?近くのスーパーでさ」

「えっ!?なんでそれ知ってんの?」

「いや、ただよった時にチラッと見かけただけだけど。お金に困ってるのかなーって思ってさ」

田中は慣れたようにウインクする。

(やべえ。神だ。神がいるよ...)

「ほら、どれ飲みたい?ちなみに、俺のオススメは抹茶フラペチーノだよー」

「じゃ、じゃあそれで」

(こりゃモテるわ。俺もこんな感じにすれば北川さんと...)

と、心の中で言いかけたところで我に返り顔が火照る。

それから席に着いた上野たちは勉強を始めた。小一時間ほどたったころだった。

「トイレ行ってくるね」

上野は2人に言ってトイレへと歩いていった。その時だった。近くから2人の女子の声が耳に入る。学年は分からないが、上野の学校の制服を着ていた。

「田中君と秋本君と一緒に勉強してる陰キャって誰ー?」

と、背の低い女子は言う。続いて背の高い方が

「あれだよ!転校生と一緒に登校してた隣のクラスの人!」

「あー、あれが噂のイキリ陰キャね。田中君たちの断れない性格に漬け込んでるのよ、絶対」

他人に対して特に関心のない上野はだったが、若干の苛立ちを感じた。

「なんも知らねえやつらが勝手に決めつけてんじゃねえよ」

同学年であろう2人の女子の後ろには田中の姿があった。

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