第7話 正体
「だからね、この人はさーちゃんの言ってるような悪い人じゃないんだってば!」
遠くで聞き覚えのある優しく、強い声がする。
「もう、悪かったって言ってるじゃない!」
こっちはほぼ同じでももっと強い声だ。
「うう...」
「あ、大丈夫!?」
転んだ拍子に頭をぶつけた上野は、ほんの少しの時間だけ気絶していたらしい。
「いてて...」
横を見ると、ボーイッシュなショートカットの黒髪に涙ぼくろ。上野はとっさに顔を隠した。上野自身も一瞬で顔が熱くなるのを感じていたからだ。
「ああ、大丈夫だよ。ちょっと頭打っただけだから」
「ふん、悪かったわね」
「ちょっと!さーちゃん!ちゃんと謝って!」
「分かったわよ!あんた、事情も聞かずいきなり手を上げて悪かったわ。また唯が悪い男に絡まれてると思ったの。本当にごめんなさい」
さーちゃんと呼ばれるロングヘアーの方の北川は、軽く腕を組んだまま上野に詫びた。
「ごめんね。この子はドッペルゲンガーじゃなくてね、私の双子の妹なの」
「双子!?どうりで似てると思った」
「そう、双子。妹の皐月っていうの。最初からこんな感じだけど、仲良くしてもらえるとありがたいな」
と、妹を紹介する。
「昔、唯が変な男に絡まれて泣いてたことがあったのよ。今回もそうかと思って早とちりしちゃったの」
「ちょっとさーちゃん」
知られたくないのか、唯は皐月を止めようとする。その顔は少し哀しそうなように上野には見えた。
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