第11話 秋本零・origin

 秋本零は大人しい子供だった。小さい頃から絵本や小説など、本が好きだった秋本は友達と遊ぶより1人でいることの方が好きだった。故に成績も優秀だった。転機が訪れたのは中学1年の時。

「お母さん、俺テニスやってみたい」

「いいわよ。あなたの成績なら心配ないわ。やりたいことをやりなさい。お母さんは応援してるから」

「ありがとう」

 秋本はテニスに没頭した。2年ですでにエースとして県では有名なほどの選手になっていた。その反動だった。秋本は以前のような優秀な成績を取ることができなくなった。そんな時、

「こんなことになるならテニスなんてやらせるんじゃなかったわ!!」

「そんな言い方は可哀想だろう」

「あんな子、私の子じゃないわ!!」

「おい!言っていいことと悪いことがあるだろう!!!」

「零じゃなくて愁を育てましょう。あの子なら私の夢を叶えてくれるわ」

 その時、秋本は気づいた。自分の母親が好きなのは秋本自身ではなく、優秀な成績を残す秋本であったと。それから、秋本が母親に話しかけられることはなかった。高校を卒業し、秋本は一人暮らしを始めた。他人のことなど気にもせず、自分のやりたいことをやり続けた。顔が整っているおかげで、彼女にも困らなかったが、秋本が本気で気にかけるような彼女は現れず、そこからたらしという噂が流れ始めた。そんな生活を続けた2年の始業式の日。2回目の転機をむかえる。

「俺と友達になろうよ!」

「え?」

 こうして、秋本は高校生活で初めての友達を持つことになる。

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