第18話 北川姉妹・origin②
なんとか中学校を卒業した姉妹は、地元から離れた場所にある高校に進学した。そこなら、中学の頃の同級生はいないと思ったからだ。入学してから数日が経ち、唯は勿論のことだが、皐月も仲のいい友達ができた。姉妹はごく普通の高校生活を送っていた。そんな生活が終わったのは、夏休みが終わった9月の頃だった。
「北川はさ、好きな人とかいるの?」
唯は仲の良かったグループの男子に声をかけられた。
「えっ、好きな人!?うーん...いないかな」
「俺はさ、北川のこと好きだよ」
「えっ!?いや、そんな急に言われても...」
「返事は急がなくていいよ。とりあえず知っといてね」
「うん......」
それから数日が経ったが、唯は迷っていた。彼はクラスの中でも中心的な存在で、女子からの人気も高かったのを知っている。唯が彼を嫌う理由はなかった。しかし、唯は中学の時から恋のせいで人間関係が崩れたのを見てきた。その一抹の不安が、唯を迷わせていた。
「ごめんね。気持ちは嬉しいんだけど、これからもいい友達でよろしくお願いします」
「..........そう...か」
これでいい。これが最善策。
それから唯が女子から嫌われるのに、時間はかからなかった。
「あいつさ、彼を振るなんて頭どうかしてるよね」
「しかもこれからもいい友達としてなんて、マジ調子乗ってる」
「うぜえんだよ。クソビッチ」
(なんでこうなっちゃったんだろ。私は、みんなと仲良く過ごしたいだけなのに)
唯はクラスで浮いた存在となり、その女子たちの歪んだ恨みは広がっていった。そんな日々が続いたある冬の日。唯は家に帰る途中だった。後ろから近づく足音がだんだん速くなり、ついに唯を後ろから抑えつけた。
「痛っ!なに!?誰!?」
「北川」
聞き覚えのある声だった。何ヶ月か前、唯が振った男の声。
「お前が俺を振ったせいでな、俺の名前に傷がついたんだよ!なにがいい友達でお願いしますだよ。調子乗ってんじゃねぇぞクソブス!」
「やめて...痛い!」
彼は唯を裏路地に連れ込んだ。しっかりと腕を掴み、力一杯拳を握る。その拳が当たった瞬間、唯の意識は飛んだ。
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