ものぐさ悪役令嬢は頑張らない

枝豆@敦騎

第1話 悪役令嬢とか、めんどくさい。

私、ステラ・カークラは唐突に思い出した。

自分が乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生していた事を。



………で?



思い出した私は目を瞬かせ首をかしげる。

転生者で、悪役令嬢だからと言って何か特別に変わるわけではない。



破滅フラグのある悪役令嬢っぽいけど、まぁいっか

死亡フラグは無いし命さえあれば何とかなるもんね、それにヒロインに何もしなければ何も起こらないと思う

と言うか何かしようっていうのも面倒くさいもん



それに今は授業中だし、と教室をさらりと見渡す。

教卓では教師が教科書を読み上げており、生徒たちは真面目に授業を受けている。

その生徒の中に、本来なら私がいじめなければいけない生徒がいた。

ヒロインであり私の双子の妹であるスピカ・カークラだ。



いじめる理由もないし…寧ろ可愛い妹がイケメンに好かれて幸せになってくれるなら万々歳ね



そんな事を思いながらぼんやりと斜め前の妹を眺めていた時、その体がぐらりと揺れガタンと大きな音を立てて倒れた。

慌てて教師や近くの席のクラスメイトが駆け寄る。

驚いていると妹は一瞬だけこちらを見詰め、そして意識を失った。


「先生、私が医務室まで運びます」


ぐったりとした妹に駆け寄れば教師は頷く。


「えぇ、お願いします。けれど女性一人では大変でしょうからフォーンさん、お手伝いをお願いできますか?」


「はい、もちろんです」


教師に名指しされたのはアステル・フォーン。

この国の王族を支える三大公爵家のひとつフォーン公爵家の長男であり、我が妹スピカの攻略対象者でもある。



なるほど、これはイベントのひとつなのかも!



正直私は乙女ゲームの内容を詳しく思い出したわけではない。

先ほど思い出したのは前世でこの世界を舞台にした乙女ゲームをプレイしたことがあって、攻略対象者とヒロインに悪役令嬢の私が断罪されるという事だけだ。



イベントなら私がついていったら邪魔になるかしら…?



首をかしげそんな事を考えているうちにアステルは軽々とスピカを抱き上げる。所謂お姫様だっこと言うやつだ。

女子生徒の数名が羨ましそうにそれを見詰めている。


「何をしてるんです、行きますよ」


「あ、はい」


アステルに促され私はスピカを医務室まで届けるべく、歩き出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る