第49話 正解が、分からない。
「…具合は?辛いところはない?すぐに治すから!あ、お腹すいてる?喉乾いてない!?お水…その前にマオと銀狼を呼んで…!」
突然目を覚ました弥太に動揺し慌てる私を宥めながら弥太は面白そうに笑う。
「大丈夫だって、落ち着け。ほら、深呼吸深呼吸」
言われた通りに深呼吸を繰り返すと冷静になることが出来た。
その間に弥太はカラスから人の姿へと変化し、起き上がると自分の体を確認する。
「…体、大丈夫?どこか調子が悪かったりしない?」
「大丈夫だ。ステラが治してくれたんだろ、ありがとな」
その言葉に安堵した私は手のひらでぺちんと弥太の頬を叩いた。
「ステラ…?」
たいした力は入れてないが私の行動に驚いたのか弥太は撫でていた手を離す。
「…怖かった…、弥太が死んじゃうかもしれないと思ったら…怖かった…」
私はベッドの脇に腰掛けると起き上がったばかりの弥太の肩に瞼を押し付けた。
戸惑いながらも両腕を背中に回してくる弥太に体重を預けると「重い」と呟かれた。
「…心配させたんだからこのくらい甘んじて受けて」
一応私も女性なのでその言葉はあまり聞きたくない。
ふて腐れたように呟けばポンポンと頭を撫でられた。
「……心配かけて悪かった。言えばお前はまたぐるぐる悩んで予想斜め上の行動とるからな…言えなかったんだ」
弥太に言われてしまえば私は否定できない。一人で悩み、悪い方向に考えてしまう私の悪い癖はなかなか直せないものなのだ。
「……ごめん、なさい」
「勘違いすんなよ、責めてる訳じゃねぇからな。それだけちゃんと考えようとしてる証拠だからな」
弥太の優しい声に胸が熱くなる気がした。
なぜこの人は私をこんなにも認めてくれるのか。両親でさえ認めてくれなかった、誉めてくれなかったのに。
「…なんで弥太は私の為にそこまでしてくれるの…私が、名前をつけた主人だから?でも命を懸けてまで守られる価値なんて私には無いのよ?」
素朴な疑問を口にすれば肩を掴まれ体を離される。
「主人だからじゃない、ステラだからだ。価値とか難しいこと俺にはわかんねぇよ、鳥頭だからな。俺にとってステラが大事だから守りたい、傍に居たい、笑っててほしい、幸せにしたい…それだけだ」
微笑みながら告げられた告白のような言葉。
こういう時、普通の女の子ならどうするのだろう?
頬を染めながら可愛らしく微笑み受け入れるのだろうか、それとも恥じらって見せればいいのだろうか。生憎、そんな胸キュン経験の無い私は正解がわからない。
ただ、弥太にそんな風に思われていたのは素直に嬉しいと感じる。
他の誰かに同じ事を言われてもこんな気持ちにはならないだろう、きっと弥太だから嬉しく思うのだ。
「……ありがとう?」
嬉しかったのでお礼を述べてみたがこれで合っているのか分からなくて疑問系になってしまった。
「礼が聞きたい訳じゃねぇんだけど…」
間違えてしまったらしい。
なんとも言葉選びと言うのは相変わらず難しいものだった。
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