第14話 責任を感じられても、めんどくさい。


お弁当を食べる前に先程負わされた火傷に治癒魔法をかける。切り傷に消毒液をかけた時の様に少し滲みるけれど大したことはない。

足の火傷を治し終え、次に腕を見てみると意外と広範囲に渡って火傷していた。


体の怪我は楽でいいわ、治癒魔法ですぐに治ってくれるのだから…治してしまえば痛みは一時だもの

さて…このままだと結構目立つし、早く治してお弁当にしよ


焦げた制服は修復魔法で治せばいいか等と考えていると急に手元が暗くなった。

何だろうと思い顔をあげれば眉を寄せ眉間に深いシワを刻んだアステルが居た。


「なんですか、その怪我は」


なぜだろう、凄く怒ってる

今日は怒られるようなことしてないのに


「火傷です」


「怪我の種類を聞いているのではありません。なぜそんな怪我をしているのか聞いているのです」


あ、火に油だったようです

眉間のシワが一本増えた、イケメンが台無しですよおに―さん


「すぐに治しますから問題ありません」


だからさっさとどこかに行ってくれたまえ、私はこれからお弁当タイムなのだよ

そう思いを込めて追い払おうとするけどアステルは引いてくれない。


「……先程、すれ違った女子生徒達が…貴女を魔法で攻撃したと話していました。それで気になって貴女を探していたんです……私が魔法を使わない様に言ったから貴女はこんな怪我をされたのでは?」


どうやらアステルは自分の発言に責任を感じているようだ。

そんな風に思われてもこちらとしては迷惑である、魔法を使わなかったのはアステルの言葉も一理あるがほとんど自分の為だ。

それで責任を感じられても面倒くさい。


「いえ、違います。私が防ぎ損なっただけですわ」


「けれどこの怪我は」


「怪我はすぐに治りますし、制服も直せます。フォーン様が気に病むことなど何一つありませんわ」


私は火傷と制服をぱぱっと治してしまうと鞄を持ち「失礼します」と引き留めようとするアステルの前から逃走した。

これ以上お昼休みを削られるなんてごめんだ。





◇◇◇

人気のない場所を探して校舎の屋上までやって来た私はやっとお弁当を広げることが出来た。

待ちに待ったお昼ご飯である。

と、思いきや昼休み終了を告げるチャイムがなってしまった。


「えー……嘘でしょ…」


鳴り響く少し高めの音にがっくりと項垂れる。

急いで食べても消化に悪いし、授業に間に合うように早食い出来る自信もない。

このまま授業にでてお腹が鳴ったりしたら恥ずかしい。


「…………………………………………………………ま、いっか。」


暫く思案した結果、私は午後の授業をサボってのんびりお弁当を食べることにした。

悪役令嬢も空腹には勝てません。ご飯、大事。

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