第13話 お昼休みなのに、めんどくさい。

翌日、スピカはクラスメイトに心配されながらも授業を受けていた。

その様子は無理をしているようには見えない、きっと体調の方はもう大丈夫なのだろう。


昼休みになり一緒にお弁当を食べようとスピカの方を見れば何故かニクスがいた。

彼は隣のクラスなのだがいつの間にやって来たのだろう。どうやらニクスはスピカを昼食に誘っているらしい。

スピカは戸惑いながらちらちらとこちらの様子を伺っている。

自分がニクスの誘いを受けてしまうと私が一人になってしまうことを心配しているのだろう、なんていい子なんだ。


王子ルートはお薦め出来ないけど、スピカが本当にニクスを好きならお姉ちゃん協力しますよ



こちらを気にしているスピカに行っておいで、とアイコンタクトすれば小さくこくりと頷いてニクスを連れ立って教室を出ていった。


お姉ちゃんの事はいいから青春しておいで!


微笑ましい気持ちでスピカとニクスを見送り、私はお弁当を食べる場所を確保する為に裏庭に向かった。






けれど、到着するなり私は自分の迂闊な行動を後悔する。

この裏庭は昨日、面倒な女子生徒達に絡まれた場所であるということをすっかり忘れていたのだ。彼女達が私の事を待ち構え視界に捉えるなりこちらを睨み、仁王立ちした姿を見るまでは。


「昨日はよくもやってくれましたわね、ステラ・カークラ!」

リーダー格の女子生徒がヒステリックな声をあげる。



うわ……わざわざお昼に待ち伏せ……

お腹すいてるんだけどなぁ…これ、対応しなきゃダメなのかなぁ…



彼女達もお腹がすいているだろうに、私に仕返しする為にお昼抜きにしたのだろうか?

いや、もしかして早弁……それはないか

一瞬、考えてしまったが一応貴族である彼女達はそんなはしたないことはしないだろう。


「…何かご用?」


私がそう首をかしげると女子生徒達は私の前に手を翳した。


「昨日のお礼ですわ、受け取りなさい!」


女子生徒達が発動した攻撃魔法によって、炎を纏った石の粒がこちらに向かって飛んでくる。

反射的に跳ね返そうとしたが、昨日『むやみに魔法を使わない』とアステルに約束していたことを思い出した。

自己防衛と言えど魔法を使った事が彼に知られたら、またお説教されるのだろうか。それはとても面倒くさい。



…怪我しても後で治せばいいし、やり返してお説教されるのもまた報復されるのも嫌だし、適当に受けてあげよう



「…………っ!」


熱と硬度を持ったそれは思いの外、痛かった。

…けれど耐えられない程ではない。

制服が焦げて穴が開き、腕や足を火傷したくらいだ。


私のやられ具合に満足したのだろう、女子生徒達はスッキリしたと言うように清々しい顔をしていた。


「これに懲りたら私達に楯突いたりしないことですわ」

「逆らうと痛い目に会うことになりましてよ?」

「それではごきげんよう、負け犬さん」


おほほほ、と優雅に笑いながら去っていく彼女達を見送って私はベンチに腰掛ける。


これで暫くは彼女達に絡まれる事はないだろう。

明日からは一人で食べる時の場所を変えなくては。

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