第31話 捜索隊-スピカ視点-

ニクスの力を利用してお姉様を探すことを決めた私はまず最初に、引き留めようとする両親を説き伏せた。

お姉様には当たりがキツいうちの両親だが私には甘い。


二人で同じ事をしていてもお姉様は叱られ私は誉められる。

やっている事は同じ、結果も手順も同じ、努力も同じ。

それなのに扱いは違う。

『ステラは出来て当たり前、寧ろもっと努力して予想外の結果を出すべき』と言う母の言葉を、昔は疑うことすらしなかった。

もちろん今ではそんな事はあり得ない、両親が間違っている事を私は知っている……ただ、私が弱いからそれに逆らえなかった。

けれど今回ばかりは両親にびくついている場合ではない、お姉様の人生が…命がかかっているのだから。


思えば、お姉様は今まで私に対してよく優しく接する事が出来たなと思う。私がお姉様の立場ならきっと妹を恨んでしまうと思うし優しくなんてできない、理不尽だって責め立てるだろう。

それをしないのはお姉様が強いからだ。

憎しみや恨みを、愛情に転換させるのはとても難しい……けれどお姉様にはそれができてしまう。出来てしまうほどに強く優しい人なのだ。


お姉様はずっと独りで頑張り続けている。私はそんなお姉様を見ていることしかできなかった。

だからこそお姉様の為に自分が出来ることをしたい。




両親を説き伏せた後、私は城下町の外れでニクスと合流した。

何故かそこにはアステルの姿もあった。


「アステルがどうしてもステラ嬢を探しに行くと言って聞かなかったから連れてきてしまったんだ、すまない」


「スピカ嬢、是非私も同行させてください。ステラ嬢を助け人々の誤解を解きたいのです」


そう言って深く頭を下げるアステルの姿に驚いた。

彼もお姉様も誤解していたと思っていたが、どうやら味方らしい。



もしかしてフォーン様は…お姉様の事を…好きだったり?

もしそうだったらお姉様の破滅フラグ撲滅仲間ってことよね……お姉様に悪い虫がつくのは嫌だけど、今は救助が優先だし仲間は多い方がいいわ



「…わかりました、よろしくお願いしますフォーン様」


了承を示せば早速アステルが集めた情報を開示する。


「ステラ嬢を拐った者達の目撃情報を集めましたが、町を出て以降の足取りは掴めていません。ですが南に向かったのは確かです」


「そうか…なら南の方に彼らの隠れ家があると言うことかい?」


「そこまでは分かりません。しかし、王家の宝物庫より魔力を検知する道具を借りて来ました。これがあれば彼らが目撃されていなくとも突き止められるでしょう」


そう言ってアステルが懐から袋を取り出し、中身を取り出す。

魔力を検知する道具だと彼が見せたのは方位磁石によく似た道具だ。


「これを王家の宝物庫から……?アステル、私はそんな話聞いていないが…」


「今、言いました。それに陛下に直接許可をいただいておりますから問題有りません」


「………そう、なのか…」


アステルの言葉にニクスがしょんぼりと肩を落とす。

どうやらアステルはニクスや国王陛下と遠慮のない間柄らしい。

だが今はそんな事よりお姉様が最優先だ。


「ニクス殿下、しょげてる暇はないですよ。フォーン様、さっそく現地へ向かいましょう」


こうして私達三人は数人の護衛を引き連れてお姉様達が最後に目撃された場所へと向かった。

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