第22話 バトルとか、めんどくさい。
ニクスが待っていたのも気になるが彼に対するスピカの反応の方が気になる。
昼休みにご飯に行くほど親密になっていたはずだが違うのだろうか?
「…スピカ。ニクス殿下と仲が良かったのではないの?」
こっそりと耳打ちするとスピカが私の腕に自分の腕を絡ませニクスには聞こえないように答える。
「仲良くなんて……少しは素敵だと思ったけど、殿下ってばお姉様の悪い噂を信じてたんだもん。ちゃんと訂正したけど……もしまだ信じてたらお姉様を悪く思うような人とは仲良くしたくないわ」
うん、うちの妹はシスコンでした
私もだけどね、むくれるスピカも可愛い
どうやらいい感じではあったものの、ニクスに私の噂に関することを言われスピカはご立腹らしい。
「私は噂なんて気にしていないのだからスピカも殿下を許して差し上げたら?」
「でも…」
不満げに唇を尖らせるスピカはそうは言いながらもニクスが気になるらしくちらちらと視線を向けている。
「…もし、私の噂のせいでスピカに嫌われたと知ったら私は殿下に怨まれてしまうわ」
「そ、それは駄目!お姉様は私が守るもん!」
意地を張る姿にそう告げてみると、スピカは慌てて私から腕を離しニクスに駆け寄っていく。
私のせいでスピカが本当に好きな人と結ばれない、なんて事にならないように言葉にしてみたが効果は抜群のようだ。
気になるなら気になるって言えばいいのに……まぁ素直になれないところも可愛いけど
ニクスは微笑みを称えたままスピカに声をかける。
「姉妹仲がいいのだね」
一瞬こちらを睨んだ気がする。
嫉妬?嫉妬なの?
羨ましいだろう、スピカにベタベタしてもらえるのは今のところ私だけの特権です
可愛い妹といちゃつきたければ姉の私を倒してから……あ、やっぱいいです
バトル展開とかめんどくさい…
スピカに全力でアピールすればいいと思います、はい
どや顔でもしてやろうと思ったけど顔の筋肉が上手く動かなかった。やろうと思って出来るものではないらしい。
表情を作ると言うのは結構難しい……いつもめんどくさくて無表情でいるから余計に。
「えぇ、私はお姉様が大好きですから。ところで殿下は私達に何かご用ですか?」
スピカがこてんと首をかしげるとニクスの目元がピクリと動く。
わかる、わかるよ
あの角度で見つめられて首をかしげられるとめちゃくちゃ可愛いんだよね
きっとニクスはスピカの可愛さに内心うち震えているのだろう。
私にはそれがよく分かる。さすがヒロイン。
「…スピカ嬢、突然で申し訳ないのだけれど私と一緒に出掛けてくれないかな。昼間のお詫びがしたいんだ」
どうやらデートのお誘いのようです。
「お断りします」
スピカの即答にニクスは驚いたように目を見開く。断られるとは思っていなかったのだろう。
これって何かのイベントじゃないのかなぁ…断って良いの?ニクスルート入れなくなっちゃうよ?
もし私の事を気にしているのなら遠慮せずに放課後デートしてきてほしい。
そう思って二人に近付きスピカに話し掛ける。
「スピカ、せっかくのお誘いなのだから行ってらっしゃい」
「でも、お姉様の体調が…」
なんと私の事を心配してくれてたらしい、いい子すぎる。
「あとは帰るだけだもの、大丈夫よ。それにせっかく殿下からお誘いいただいたんだもの、お断りしては失礼だわ」
スピカは暫く悩んでいたがやがて頷いてニクスの誘いを受けた。
「……わかりました、そのお誘いお受け致します」
「ありがとう、スピカ嬢。………ステラ嬢も」
ニクスは柔らかい微笑みをスピカに向けた後、こちらを見て少しだけ微笑む。
どうやら私は妹の幸せに少し貢献できたようだ。
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