第9話 イベントを見守るとか、めんどくさい。
「倒れたと聞いた時は心配しましたが元気そうで安心したよ」
「ご心配いただき感謝致します…けれどまさか殿下が私のお見舞いに来てくださるなんて思いもしませんでした」
言葉を交わすスピカとニクスを見ながら私は困惑していた。
父にニクスを押し付けて、部屋でのんびりしようと思っていたのに「このような年寄りの案内より娘に案内させた方が殿下にとってもいいだろう」とか言われ私はニクスを案内することになったからだ。
たまたま通りかかった侍女を一人巻き込んでスピカの部屋に入る。
「ただいまお茶をご用意致します」と仕事に逃げた侍女は私を残して行ってしまった。
そして今に至る。
一緒に私も退室すればよかったのだが、スピカがすがるような眼差しを此方に向けてきたので逃げ出すわけにもいかなくなった。
そりゃ具合悪い時に王子が来たら気を遣うよねぇ……しかも、二人きりにさせられたりしたら…もし私なら胃が痛くなりそう…
そんな事を思いながら先程から立ちっぱなしの二人を椅子に座るように誘導する事にした。
スピカはまだ具合が悪いかもしれないのに、ずっと立たせておくわけには行かない。
いくら王子様でも妹に無理させるなんてお姉ちゃん許しませんよ
うちの妹がもっと体調悪くしたらどうしてくれるんですか
「スピカ、いつまで殿下を立たせておくつもりかしら?お客様を立たせたままだなんて失礼でしょう、そんな事も分からないのかしら。殿下、こちらへどうぞ」
目上の人が先に座ってくれないとスピカが座れないでしょ、さっさと座れ
そんな意味を含めてニクスに座るように促す。
「そ、そうですね。申し訳ありません殿下」
「気にしないでくれ、勝手に押し掛けたのはこちらだからね」
そう言いながら腰を下ろすニクスの正面にスピカが座る。私はスピカの隣に腰を下ろす事にした。
「……けれど、ステラ嬢の言葉は少し厳しいのではないかな?スピカ嬢はまだ本調子ではないのだろうし…もう少し柔らかい言い方があると思うけれど」
その本調子ではない妹の部屋に乗り込んでおきながら何をいってるんだ、と溢れそうになった言葉を飲み込んでいると同時にスピカが慌てて口を開いた。
「私が至らなかったのです、お姉様は注意してくださっただけですから…。けれどお気遣いいただきありがとうございます、殿下」
「…スピカ嬢は姉思いなのだね」
「いえ、そんな…」
ぽっと頬を染めるスピカを微笑ましく見つめるニクス。
私をだしにして二人でラブい雰囲気つくるの止めてもらっていいですか?
あ、これってもしかしてそういうイベントだったりするのかな……それなら仕方ないか
居心地の悪さを感じながら私はそっと肩を竦めた。
それにしてもこのイベント、私が見守る必要あるのかしら?…めんどくさい
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