第10話 姉妹の時間は、めんどくさくない。
KYO-空気が読めない王子-が帰った後、私は即座にスピカをベッドに横にさせた。
「今は平気かもしれないけど具合が悪くなったらすぐに誰か呼ぶのよ。呼び鈴は手の届く所に置いて、あと水分補給はゆっくりでいいから必ずしてね」
そう言って布団をかけてやればスピカは照れた様に笑う。
「お姉様ったら……私、もう子供じゃないのよ?」
「あら、雷がなる度に『お姉様怖い!』ってベッドに潜り込んでくるのは誰かしら?」
「か、雷は…仕方ないと思うのっ!ピカッと光ってどかーんて落ちて怖いんだもの」
拗ねたように唇を尖らせる妹はマジ天使だと思います
そんな妹の頭を軽く撫でていた私は彼女に言わなければいけない事があったのを思い出した。昼間女子生徒に破られた本の事だ。
直してからの方がいいのだけれど、後回しにすると言いづらくなってしまいそうだから…先に謝っておこう…
破ったのは私ではないのだけど、付け入る隙を与えてしまったのは私の落ち度だ。
私は床に置いていた鞄からそっと本を取り出した。
「スピカ……貴女に借りていた本なのだけど、私の不注意で表紙が破けてしまったの…これからちゃんと直すわ、本当にごめんなさい。大事な本を傷付けてしまって」
私が頭を下げながら本を見せるとスピカは数度目を瞬かせた後に首を横に振った。
「…気にしなくていいわ、お姉様。きっと表紙が脆かったのね。中身は無事?」
「えぇ、表紙だけよ。きちんと直すからもう少し預からせて」
「わざわざいいのに……でも、ありがとう」
スピカは少し眉を下げた後、にっこりと微笑んでくれる。
私の天使は優しすぎる。
「本を傷つけてしまったお詫びに何でもするわ」
私がそう言うとスピカは「本当に気にしなくていいのに」と微笑んでなにか思い付いたように小さく声をあげた。
「じゃあ……小さい頃みたいに手を、繋いでほしいの。駄目?」
「もちろん、構わないわ」
躊躇いがちに差し出されたその手を握るとスピカは嬉しそうにふにゃりと笑う。
私の妹はマジ天使である
こんなことならいくらでも叶えてあげたい
手を握ったまま少し疲れたからと眠りにつくスピカに寄り添いながらそう思うのだった。
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