第38話 色恋話は、ついてけない。

和解した数日後、スピカがニクス達と共に村に遊びに来た。

ニクスはこちらへの配慮なのか護衛を最小限にしてやって来たが、住人達は王子様の登場に動揺を隠せていない。にも拘らず私の知り合いならと皆受け入れてくれた、ここの住人達は柔軟性がありすぎると思う。



「……あの、ね…お姉様。二人きりで話したいことがあるの」


ニクス達に村を案内し休憩を挟んだところでスピカが私にこっそり耳打ちしてきた。皆がいると話しづらい事なのだろう。

私が二つ返事で了承し、移動しようとすればそこにマオが待ったをかける。


「私も行くっ!いくらステラちゃんの妹でもステラちゃんを傷付けようとしない保証なんかないもん」


マオは私の事を案じてくれてるらしい。

いくら大丈夫だと言っても聞かないのでスピカにマオを同行させてもいいかと尋ねれば少し躊躇ったが「女の子なら…」と了承してくれた。


仕方なく私はニクス達の事を弥太と銀狼に頼みマオとスピカと三人で自宅に戻った。

お茶を用意してスピカと向かい合うように座ると横にマオが腰掛ける。


「それで話ってなにかしら?」


首をかしげるとスピカは少し言いにくそうに視線をさ迷わせながらぽつりと呟いた。


「あのね……私……もしかしたら……ニクス殿下が…好き、かもしれない…」


「それって恋ばな!?やーん、素敵っ!」


目を輝かせて話に飛び付いたのは私じゃない、マオだ。


「ニクスってあのいかにも王子様って感じの子でしょ?スピカちゃん、あの子が好きなの?」


興味津々に身を乗り出すマオにスピカは慌てて手をパタパタ横に振る。


「かもしれないってだけでっ…まだ好きとか決まった訳じゃないのっ!」


そう言うわりにほんのりと頬が赤い。



これはもうがっちりニクスルートね…うんうん、可愛いスピカが惚れた相手ならお姉ちゃんいくらでも応援しますよ



微笑ましくその光景を見守る私を他所にマオがぐいぐいとスピカに突っ込んだ質問をしていく。


「出会いは?デートはもうしたの?告白は?」


「……マオ、落ち着いて。スピカが困ってしまうわ」


「あ、ごめんね?今までこう言う話を女の子同士でしたことなかったからずっとしてみたくて…つい」


可愛らしく謝るマオにスピカが首をかしげた。


「そうなの?」


「そうなのよー。猫又の一族は人間に比べて淡白でねぇ…なかなか胸キュンするような恋の話なんてないからつまらないの。だから聞かせてほしいなって!あ、もちろん私が出来うる限りのアドバイスはするわ!これでも猫又一族の長だもん、経験は豊富よ!」


「凄い……!是非お願いします師匠!」


「まっかせてー!ステラちゃんの妹ちゃんの為なら一肌脱いじゃう!」


がっちりと握手を交わしたマオとスピカを眺めながら私はお茶を一口飲んだ。

可愛い妹に頼もしい友人が出来たようで何よりだ。



そっか、マオって猫又一族の長だったんだ…知らなかった……恋愛経験豊富なんてもっと知らなかった……



色恋の話をついめんどくさいと感じてしまう私にはまともアドバイスも出来ないし、マオが適任だろう。



その後、意気投合したマオとスピカは楽しげにずっとガールズトークを繰り広げていた。

楽しそうで何よりだ。


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