第43話 言葉にしない方が、めんどくさい。
あれから数日、私は弥太から避けられていた。
言葉を交わしても必要以上の会話だけ。それ以上話しかけようとすると何処かへいってしまう。
理由はよく分からないが、あの時弥太が何かを言いかけたことが関係しているのではないだろうか。
一人で悩んでいても答えは出ず、らちが明かない。なので弥太のいない隙にマオと銀狼に相談してみることにした。
「……と言うわけなの。私、弥太に嫌われたのかもしれなくて…二人は私より弥太と付き合いが長いでしょう?何か弥太から私に対する不満とか、聞いてない?」
「弥太がステラちゃんを嫌うなんてあり得ないわ」
「右に同じく」
即答された。
「で、でも…実際に避けられてるし…」
「弥太が直接ステラちゃんを嫌いだって言ったの?」
言い淀む私にマオが首を傾げる。
「言われてない…けど言わずに察して欲しいとか態度で分かって欲しいとかあるだろうし…」
「ステラ殿、弥太はそんな器用さを持ち合わせてはいない」
銀狼の言葉にマオが真顔で頷く。
「弥太は嫌いになったらズバッと言っちゃうわよ、人間みたいに『言わずとも察しろ』なんて馬鹿みたいな真似はしないわ」
「ば、馬鹿って…」
私も一応人間なのだがマオは言葉をオブラートに包むような真似はしてくれない。
「私も長い間生きてるけど『言わずとも察しろ』なんて事を言うのは人間くらいよ。言葉が通じない時期ならまだしも大人になってそれを要求してるんだから、何の為に言葉を学んでるのか私には不思議でならないわ。言葉にしない方が色々めんどくさいんじゃないかしら」
肩を竦めるマオを横目に銀狼が話の路線を戻す。
「人間の事は兎も角として、マオの言うとおり弥太は回りくどい事が苦手だ。嫌っているならばはっきりとそう言うだろう…言われていないと言う事は嫌われてなどいない証拠だ」
「そうそう。だから嫌われてるかもーなんて心配しなくていいわよ」
そっか……そうよね…
弥太は自分は私の味方だって言ってくれたんだもの、私がそれを信じないでどうするの
きっと何か事情があるのよね
弥太にはいつも助けられてばかりなのだ、疑うと言うのは恩を仇で返すような気がする。
マオと銀狼のお陰で悩んでいたことが解決し、私は弥太を信じると決めた。
何か事情があって今は私の事を避けたいる弥太だけど、またきっと前みたいに他愛もない話ができるとそう思っていた。
数日後、弥太が姿を消すまでは。
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