SS ヤタガラス
生まれてすぐ、俺は死んだ。
理由は簡単。巣から落ちたのだ。
まだ毛も生え揃わないカラスの雛が高い巣から落ちて無事なわけがない。
自分の体だったものを俺は見下ろしていた。
きっと死骸は動物の餌にでもなって終わるのだろう。
ぼんやりとそんな事を考えていると声が聞こえた。
「ねぇ、止めようよ…なんか怖い」
「大丈夫よ、私がするから。このままにしておくのは…可哀想だもの」
とっくに冷たくなった俺の体がふわりと何かに包まれる。
「少し待っててね」
俺の体を持ち上げたのは人間の少女だった。
少女はまるで俺に話しかけるようにそう告げると、いつの間にか掘られていた穴に俺の体を埋葬し小さなお墓を作ってくれた。
「これでよし」
「お姉ちゃんは凄いね。私は怖くて触れないのに…」
少女の後ろから同じ顔がもう一人、出来たばかりの墓を覗き込んでいる。
「そんことないわ。ただ…なんとなく、このままにしておけなくて」
「もー、ほんとそういうところ優しいよね!流石私の自慢のお姉ちゃん!大好き!」
「優しいわけじゃないのよ?でも、ありがとう」
そう言って抱き付く少女に微笑みながら、彼女は立ち去ってしまった。
……こんな人間もいるのか
ほんのりと暖かい気持ちを抱きながら俺の魂は天に上った、はずだった。
―――が、意識が薄れ次に目を覚ました時は足が三本のヤタガラスの一族として生まれ変わっていた。
こんな事があるのかと正直驚いたが現実にあるのだから受け入れざるを得ない。
俺はヤタガラスの生を謳歌しながらいつかどこかであの子に会えたらいいのにと思うのだった。
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