第26話 校則とか、めんどくさい。

翌朝、いつものように私達は二人で登校した。

いつもの校舎、いつもの同級生、何も変わらないけれど弥太の言葉のお陰でいつもより顔を上げて歩けている気がする。

けれど私の平穏は長くは続かない、昼休みに教室に例の女子生徒達が乗り込んできたからだ。


「ステラ・カークラ!」


キンキンと声を上げながら乗り込んできた女子生徒達にクラスメイトは動きを止める。



うわぁ、また出た……この子たち暇なのかしら?



驚愕するクラスメイト達に反して私は真顔のまま心の中でため息をついた。

幸いスピカは今、教室にいない。

心配させてしまうのは嫌だし、外に連れ出した方がいいかと考えていると女子生徒は私の腕を掴んで立たせる。


「ぼんやりしてないでさっさといらしたらどうですの!?私に負けた以上、反論は許しませんわよ!」



えー……負けてあげたらそういう扱いされるの?

めんどくさい…今度は叩きのめしちゃおうかな……いや、でもそのあとがめんどくさいし女の子に傷はつけたくないし…手加減て難しいんだよねぇ……



内心でそんなことをぼやきながら抵抗せず引っ張られ廊下に出た時。



「貴女達、何をしているんですか!」


残っていた片方の腕を後ろから引っ張られた。

振り返るとアステルが私の腕を掴んで女子生徒達を睨み付けている。


「私達はステラ・カークラに用があるだけです。フォーン様には関係のないことですわ」


「そう言ってまた彼女を傷つけるつもりですか。貴女方は余程嫌がらせがお好きなようですね」


アステルは私を助けようとしてくれているらしい。

けれど、教室の前でこんなに騒がれれば他の生徒にも迷惑だ。


「まぁまぁ、お二人とも私の為に争わないで下さい」


廊下で騒ぐのは良くない、場を和ませてみようとそう告げてみた。


「まぁ!私達が貴女の為に争っているだなんて勘違いも良いところですわ、私に敗北した貴女の立場をはっきり教えて差し上げたいだけですもの!」


逆効果だったようだ。残念。

目を吊り上げた女子生徒に対して今度はアステルが声をあげる。



「学校内ではそのように個人の自由を奪うような事は校則で禁じられています」



へー……そうだったんだ…知らなかった



アステルの言葉ではじめてそんな校則があるのを知った。

入学時に説明された気がするけどすっかり忘却の彼方にぶん投げていた。


「ステラ・カークラは先日私との勝負に負けましたのよ。ですから私より格下と言うことですわ!私の言うことを聞く義務があるのです!」


彼女はそう言って胸を張るけれど負けたら言うことを聞く、なんて約束してないしそんな義務はない……というかあったらそもそも勝負なんかしてない。めんどくさい。


「ステラ嬢、そう言う約束を正式に交わされたのですか?」


アステルがこちらに確認してきたので私は首を横に振る。


「彼女はしていないそうですよ。貴女のそれはただの横暴だ」


「なんですって!?ニクス殿下のご友人だからとこちらが下手に出ればなんという暴言!」


いやいやー、貴女一度も下手に出てないからね?

下手と言う言葉を辞書で引き直した方がいいと思うな



きっとこの人は本とかあまり読まないんだろうなー、なんて考えながらキーキーと喚く女子生徒を見詰めているとそれが気に障ったのか、彼女は私の腕に強く爪を立てる。

制服の上から食い込んで痛い、わざとなのだろうけどこの程度の痛みには慣れているし治癒魔法で簡単に治せるから問題ない。


けれどそう思ったのは私だけのようだ。

アステルの視線が捕まれた私の腕に向き、女子生徒の手を引き剥がそうと手を伸ばした時だった。



「ステラ!!」

「ステラちゃん!」

「ステラ殿!」



私の名を呼ぶ三つの声と共に、廊下の窓ガラスを突き破って動物姿の友人が現れた。

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