第27話 めんどくさい事になった、気がする
「ステラ、大丈夫か!?」
「あんた達、私の主人から離れなさい!」
「我が主に危害を加えるものは許さん!」
ガラスが割れたかと思いきや人の形に変じ弥太は私を抱き寄せて、マオは女子生徒とアステルを引き剥がし、銀狼は周囲を威嚇するように唸り声をあげる。
一瞬で大惨事となってしまった。
女子生徒達だけではなくアステルや、遠巻きに様子を伺っていた生徒達も突然の出来事に動揺しているようだ。
頭がついていかずにいると、弥太に腕を取られ袖を捲られる。そこは女子生徒に捕まれていた所でくっきりと爪の跡が残っており、ほんの少しだけ血が滲んでいた。
制服の上からでもこんなにくっきり残るとか…どれだけ爪伸ばしてたのかしら?
私はともかくとして、彼女のお友達に怪我させちゃうかもしれないし伸ばし過ぎは良くないと思うなぁ…爪って意外と凶器になるのよね
呑気にそんな事を考えている私に対して弥太の眉間には深い皺が刻まれていた。
「血の匂いがしたから慌てて飛び込んでみれば……ステラにこの傷をつけたのは誰だ!?」
こんな微々たる血の匂いを嗅ぎつけたとか、弥太ってヤタガラスよね?サメじゃないわよね?
怒鳴り声に私に絡んできた女子生徒達がびくりと後退りする。
動かなければバレないのに、そうして人は態度で自白してしまうのだろうか。
「お前か……その腕引き裂いてやる!」
弥太が女子生徒に掴みかかろうとしたので、さすがにそれはまずいと慌てて止める。
「ストップストップ!弥太、そんなことしちゃダメ。こんな小さな傷すぐに治るから大丈夫よ、ね?」
小さな傷ひとつに過剰反応し過ぎだ。
「傷の大きさなんて関係ない、ステラに手を出したと言うことは俺達への宣戦布告と同じだ。ステラを傷付けたあいつは許せない」
「弥太の言うとおりよっ!私達はステラちゃんが大好きなの、大好きな人を傷つけられて黙っていられるわけないじゃない!」
「そうだ。我らは主人に忠誠を捧げると決めている、その主人に手を出されて黙ってはいられぬ」
弥太の言葉にマオと銀狼が私の元に駆け寄ってきた。
主になったと言うだけでこんなにも大事にされるものなのだろうかと私が困惑していると、騒ぎを聞きつけた教師達や他の生徒達が増えた。
「何事ですか!?」
「ひっ…ば、化け物!」
「皆さん、すぐに離れて避難してください!」
「おい、あの化け物ステラ嬢を守ってるぞ?」
「もしかして彼女が学校を襲わせたのか!?」
生徒達の中から聞こえる声は私の悪い噂を信じている人達のものだろう。
……これはめんどくさい展開になりそうな気がする……
生徒や教師達の声に便乗するように先程まで弥太に睨まれていた女子生徒が私達を指差して叫んだ。
「なんて恐ろしい……っ!化け物を引き連れて私達を殺そうとしてる!あれは魔女だわ!」
私の事はともかく弥太達を化け物だの呼ばれるのは心外だ。
抗議しようと彼女に視線を向ける口を開く。
「この子達を悪く言うのは止めてください」
「ひぃっ!魔女に呪われる!!」
うん、会話は成り立ちそうにありません…通訳を急募します
呪いなんてスキル、私にはないからね?
落ち着かせようとさらに声をかけようとするが集まってきた教師達に取り囲まれる。
教師達は各々魔力を封じるための鎖を手にしていた。それで私達を捕らえようとしているのだろう。
「待ってください!彼女は魔女なんかじゃない!」
アステルだけが必死に止めようとしてくれるけれど教師の一人に抑えられていた。
このままじゃ弥太達が捕まっちゃう……化け物だって勘違されているし、捕まったら安全は保証してもらえないかも…
「弥太、逃げて」
私が誤解を解くまで彼らには逃げていてもらおうと思いそう告げると、弥太は頷いて私をひょいっと横に抱き上げた。
「……え?」
「よし、お前ら逃げるぞ!」
私の頭が自分の状況を理解するより早く、弥太は私を抱き上げたままマオと銀狼を連れて学校を飛び出していた。
「お姉様!!」
弥太が飛び出した時、一瞬だけスピカの声が聞こえた気がするが姿は見えない。
あー…言葉選び間違えたかも…この後どうしよう……
ぐんぐんと離れて行く校舎を弥太の肩越しに眺めながら、私は今後の事に頭を悩ませるのだった。
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