まとめ39 出立・5

 砂埃が沈んだとき、そこにはフィンが立っていた。


「ここ、は……」

「ククッ、無事に帰れたようだな……ほっ」


 ホッと安堵するマジックの声を聞いて、やっぱり戻れる確率は低かったのだろうと君は判断する。

 同時に彼女たちが無事に戻って来てくれたことに君は嬉しく思う。

 ……思うのだが、当のフィンの様子が何処かおかしい。

 というよりもココアとミルクは……? いや、理解しようとしているのだが頭が認識しようとしていないようだ。

 何故なら……。


「……あるじの、におい?」

「そうだ……。ごしゅじんの、においだ……! ずっと嗅ぎたいって思ってた大好きなにおいだ! ごしゅじん!!」

「あるじ!!」


 首を傾げる美少女2人がそこには居た。

 幼さが抜け切り、少女から大人へと昇り始めている獣人の美少女2人。

 その2人が鼻をヒクヒクとさせ、君を見ると……瞳を潤ませ始め、君に向かって飛びついてきた。

 度々嗅ぎ慣れたにおいと汗臭いにおい、それとは別の匂いが君の鼻を突き抜けつつ……戸惑いながら君は尋ねる。

 ココアとミルクかと?


「ん、あたし。ミルクで間違いない」

「当たり前だ、オレはココアだ! ご、ごしゅじん、オレたちの顔を忘れたのか……?」


 君の問い掛けに不安そうにココアが君を見る。釣られてミルクも君を見てくる。

 その瞳に君は戸惑いつつ、美人になってたから気づかなかった……。と口元を押さえながら言う。

 君の言葉に2人はキョトンとした様子で君を見る。

 だが、本当に彼女たちの姿は変わっていた。

 胸が物凄く大きな幼い子供だったのが、身長も伸びているからとても美しく見える。

 君の言った言葉を噛み砕き、ミルクとココアは嬉しそうに笑うと……気身を見て……。


「あるじ、あたしたち変わった?」

「オレたちはよく分かんないから、ごしゅじんが教えてくれないか?」

「ん、あるじ。成長したのかちゃんとみてほしい」


 そう言ってココアとミルクは君に向けて両腕を広げながらお願いする。

 ……胸も前よりも大きくなっている上に下着が無いようなので、広げた瞬間たわわな果実はブルンと揺れた!!

 ごくり、と喉が鳴りそうになったが何とか堪える。だって、周囲にサンズたちがいるのだから……。

 彼女たちの好奇な視線を感じつつ、断ることが出来ないために君は2人をまじまじと見る。

 ミルクは凛々しい感じに成長しており、背中まで伸びた白い髪を蔓の様な物で一本に纏めている。

 筋肉のほうも素早く動けるように鍛えたのか、手足は筋肉が無いように見えてスラッとしている。

 ココアはモフモフとした髪がより伸びたのかボサッとなっているため一度切ったほうが良いだろうな。

 そう思いながら視線を下に向けていくと、ミルクよりもさらに2周りほど胸が大きくなっていた。

 これが伝説の乳枕と呼ばれるものだろうか?!

 しかも筋肉はきちんと鍛えていたようで、ちょっとやそっとの攻撃ではビクともしなさそうに君は感じた。

 そう思っていた瞬間、君の背後から飛び出す人物が居た。

 サンズだ。


「はあっ!!」

「う、うわっ!? な、何するんだよ突然!?」


 バシンッ! という激しい音が響いた瞬間、ココアが驚きながらサンズを見る。

 だがサンズのほうは驚いているようで、ココアの手を見ていた。

 当たり前だ、何故なら突然殴りつけてきたサンズの拳はココアの手に掴まれているのだから……。


「おっどろいた……。オーガ殴りつける力だったのに」

「そ、そんな力で殴りつけてたのかよっ!? 酷くねーか!!」

「いやー、ごめんごめん。何ての? 滲み出る力に体が勝手に……ね?」


 勝手にね、じゃない。そう言いながら君はサンズの頭を後ろから掴む。

 更には君の背後ではサンズの馬鹿な行動にセインが怒っているようで、制裁用武器を持っている。


「サンズ、馬鹿な行動は控えるようにと何度も言ってるですよね?」

「あ、あー……そ、その……」

「ちょっと尻叩きを行うのです♥」

「えっ!? ボ、ボクもう大人なんだけど!? そこなのに尻叩きって酷くない!?」

「大人だったらもう少し色々と弁えるのです!!」


 ――ボゴンッ!!


「ぎゃんっ!? ちょっ!? そ、それ、痛いんだけどっ!?」

「当たり前なのです、痛くしてるのです!!」


 ――バス、バスッ!


 制裁用武器、世界樹で作られた棍棒を手にセインはサンズの尻を叩く。

 とりあえず、サンズは痛がっている様に見えるが……実際は痛くないだろう。

 君はそう思いつつ、ココアを見る。


「あー、痛かった……。ふぅ、ふぅ……」


 彼女はサンズの拳を受けた手をふらふらさせつつ、痛みを減らそうとしているのか息を吹きかけている。

 君は大丈夫かと尋ねるが、ココアは平気そうに頷く。


「大丈夫だぜ、ごしゅじん!」


 その様子から本当に平気そうだ。

 強くなっていることに嬉しく思いつつも、君は見た目が成長したとしてもココアはココアだし、彼女を心配そうに見るミルクもミルクだと改めて理解する。

 だから君は彼女たちへとお帰りと言うと、2人は互いに顔を見合わせ……嬉しそうに微笑み、


「ただいま、あるじ」

「ただいま、ごしゅじん!」


 と言った。

 そんな2人を見てから、フィンのほうを見ると……ボケーっとしていたフィンが彼女たちの行動を見てようやく帰ってきた実感が湧いて来たようだった。


「その、ご主人様……。ただいま帰りました」


 おかえり、と君はフィンにも言う。

 その言葉に彼女は嬉しそうに微笑む。

 君はフィンを改めて見るけれど、エルフだからか彼女の目立った様な成長は見られず、何時も通りのように感じられる。

 けれど、自分を見る視線に何か違和感を感じると君は思っていると、フィンが君へと歩み寄ってきた。


「その、ご主人様……。申し訳ありません」


 何が申し訳ないのか、君が尋ねようとした瞬間――、彼女は君にキスをしてきた。

 突然のことで君は固まり、動けなくなる。

 けれどもそんなことは気にしないとでも言うように、フィンは君の唇に自らの唇を押し付けると舌を君の口へと押し込み、その舌で舌を絡め始める。


「んっ、ふぅ……んちゅ、ん……♥ ちゅ、っちゅ……♥ …………ぷぁ♪」


 暫く唇を奪い続け、驚きの視線を独り占めにしたフィンは君から唇を放す。

 君の唇と離れるのに未練がある、とでも言うように口と口の間に涎の架け橋が垂れ……君へと潤んだ瞳を彼女は向ける。

 その視線に女を感じつつ、君は戸惑いながら……いったい何をと尋ねた。

 するとフィンは頬を染めつつ、口を開けた。


「ご主人様、わたしは……

   ご主人様と結婚したいです」

   ご主人様とエッチしたいです」

   ご主人様とこうしたかったんです」

  →ご主人様を見て我慢できませんでした」


「ご主人様、わたしは……ご主人様を見て我慢できませんでした」


 そう君へと頬を染めながらフィンは言う。

 彼女の表情に君は戸惑いと同時に色気を感じ、ゴクリと喉を鳴らす。

 そんな君の両側へと何時の間にかミルクとココアが立っており、君の体へと自身の体を密着させ始めた。


「あるじ、フィンねぇにもしたんだから、あたしにもして欲しい……」

「ごしゅじん、オレもお願いしたいな。ずっとごしゅじんのことをオレもミルクもフィンねーも思ってたんだからさ」


 そう言いながら2人は君の耳元で囁く。

 ふうとかけられる吐息、彼女たちの汗のにおい、柔らかい双丘の感触。

 無意識に行われているであろう彼女らの行動によって君の頭はクラリとし始める。

 なんと言うか必死に抑えていた理性の壁が一気に崩れてしまいそうにぐらぐらと揺れている。

 ――が、なんとか抑えて君は2人へと呻くように、あのときも言った様に、20歳を超えないとダメだ。と言う。

 君の言葉を聞いて、彼女たちは不満そうな顔をしたが……フィンが君へと語りかけた。

 その表情は申し訳無さそうであるけれど、物凄く嬉しそうな表情をしていた。

 彼女の表情の理由はいったい? そんな疑問を抱く君へと、フィンは冒険者カードを君に見せた。


「ご主人様、超えてました。20歳」


 その言葉を聞きながら、君はフィンのカードをまじまじと見ると年齢の項目が『18』ではなく『24』となっていた。

 どうやら彼女たちが行ってた世界とこの世界のズレは一日が一年だったようだ。

 それを納得していると、ミルクとココアの2人も思い出したようにカードを見せた。

 共に『20』だった。

 彼女たちは見事君の出していた条件をクリアしてしまっていた。


「おっさん、3人としないといけなくなったな」

「セインも混ぜて欲しいのです!」

「ハーレムだね、小父さん!」

「ハーレム内の恋愛もありさー♪」

「クククッ、予言どおりとなったな小父殿」


 サンズたちがそう言うと、君は崩れ落ちた。

 まだ数年はかかるだろう。その間に良い人を見つけて欲しい。

 そんな思いを込めて君は言ったのに、彼女たちは諦めていなかったのだ。

 そしてそのことに君は喜びも感じていた。

 ――こんなオッサンで良いのか?

 そう君は彼女たち全員に尋ねるように言う。


「ご主人様じゃないと嫌です」

「あるじが、あたしを助けてくれた」

「ごしゅじん以外の奴なんて考えられねーよ」


 君の問い掛けにフィンたちが言う。

 彼女たちの言葉に続くように他の面々も……、


「おっさん以上に信じられる人なんてやっぱり居なかったからさ、幸せにしてくれるって思ってるし」

「セインはあのときから小父さま一筋なのです!」


 サンズがはにかみながら笑う。

 セインが瞳を輝かせながら言う。


「一番はクラフだけど、男の人だと小父さんが一番だね」

「そうそう。スミスが一番で、子供作るならおやっさんだと思ってるさー♥」


 スミスとクラフが指を絡ませるように互いの手を握り締めつつ君へと言う。

 それは喜んでもいいのだろうか?

 そう思っていると……、


「クククッ……い、いや。その……ぼ、僕だって小父殿とエッチなことしたかったから女の子になったんだよ!!」


 何時もの芝居がかった喋りをしようとしたマジックだったが周りの普通に話すようにという視線に負けたのか、素の状態で君へと語りかけた。

 彼女たちの視線を浴びながら君は呻き……。

 彼女たちへと責任を取ると、頷いた。

 君の言葉を聞き、彼女たちは喜び始める。

 そんな彼女たちを見つつ、君は覚悟を決めると同時に心の中で久しぶりの行為に少なからず興奮を抱いてしまっていた。

 だが彼女たちへと君へと言う。

 一度、身奇麗にするようにと……。

 君の言葉に彼女たちは頬を赤らめる。

 特にフィンたちは修行を終えたばかりなのだから少し休んで欲しいとも言うと、彼女たちは頷いた。


「分かりましたご主人様。……その、今晩は期待しても良いですよね?」

「分かった。いっぱい、愛してねあるじ」

「オ、オレたちも、いっぱいごほーしするから!」


 そう言って彼女たちは家へと入る。

 とりあえずお風呂に入ってから仮眠を取って欲しいと思っていると、セインが君へと言う。


「小父さま、とりあえず彼女たちの服を新しく用意しないといけないのです」

「防具のほうはあちきたちで用意するけど、服は大事だね。特にココアとミルクの服が」


 彼女たちの言葉を聞き、君は頷く。

 確かに成長した彼女たちの服は必要だ。

 フィンは大差ないけれど、ココアとミルクの2人は頭ひとつ分と大きく成長していた。

 なので、下着も服も全て新しい彼女たちの大きさに合う物に変えなければいけないだろう。

 そう思いながら君はスミスとクラフの2人にフィンたちの体型を確認してもらった。

 そして何時ものように『クレセントムーン』へと向かった。


「いらっしゃーい。馬車はもうすぐ完成するからもうちょっと待っててもらえれば――ん、そっちじゃない?」


 何時ものように君に声をかけるネコへと、君はフィンたちの服を用意してもらうようお願いする。

 ただし、成長した姿の服をだ。


「ふむふむ、なるほどなるほどー。っと、こっちの2人は結構成長したみたいだねー。で、今日はズッコンバッコン大騒ぎ? よっ、このハーレム系主人公!」


 いったいこの人は何を言ってるのだろうか? ハーレムは分かるが主人公とはいったい。あと女性がズッコンバッコン大騒ぎと言うな。

 そう思いながら君はネコが用意する衣装を待っていると、彼女はすぐに服を用意してきた。


「どんな感じの服かは彼女たちが着てみてからのお楽しみで。あと、こっちはオマケだよ。8人分揃えているから、夜のお供に最適! あと、精力剤もオマケだよオマケ! レッツエンジョイ!」


 ニヤニヤと笑うネコに居心地の悪さを感じつつ、君は服とオマケが入った袋を受け取り、店を出て行く。


「またどうぞ~。あ、ベビー服も取り扱ってるからね」


 まだ早いだろうと、君は思いつつ今度こそ店を出て行く。

 そしてそそくさと食材を買いつつ家へと帰ると、フィンたちはお風呂から上がっていた。


「あ、お帰りなさいご主人様」

「あるじ、おかえり」

「おかえり、ごしゅじん」


 彼女たちに君は返事を返しつつ、買ってきた服が入った袋を置く。

 置かれた袋の中に新しい服があることを告げると彼女たちは頭を下げ、嬉しそうにしていた。

 君はそんな彼女たちを見つつ、食事を作り始める。

 そしてあっという間に料理を作り終え、全員で食事を取りつつ……時折チラチラと向けられる視線にどう反応すれば良いのか君は困っていた。

 当たり前だ、彼女たちも先ほどの自分たちがした発言とこれから行われる行為に期待と恥かしさを感じているだろうから……。

 食事を終え、君たちは少し休む。

 休むのだが、やはりモジモジとし始めているからか、なんというか歳柄もなく緊張してしまう。

 君は席を立ち、部屋へと戻ると口にし二階へと上がっていく。

 そして、胸の鼓動が高くなるのを感じつつ……君は彼女たちを待っていた。

 ――コンコン、と扉がノックされ……ゆっくりと扉が開けられた。


「お、お待たせしました。ご主人様……」

「あるじ、おまたせ」

「ご、ごしゅじん、どう……だ?」

「あ、あはは……、ちょーっと恥かしいかもこれって」

「セインの試練なのです」

「スミス可愛いさー」

「クラフも可愛いね」

「お、小父殿にこれから……はぁはぁ」


 モジモジとする彼女たちは全員、


  →ベビードールと呼ばれる下着姿だった。

   裸だった。

   寝巻き姿のワンピース姿だった。

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