投票で展開が変わる奴隷とご主人様の物語 まとめ

清水裕

まとめ1 一日目・1

 君は奴隷市場に立ち寄った。

 そこで君は心身ともに傷付いたエルフを見つけた。

 商人の話を聞くと、故郷の森を焼かれた上に前の主人が最低のクズヤロウだったようだ。

 その話を聞いて君はそのエルフをもう一度見ると……彼女の瞳は淀んでいたが生きたいという意志が感じられた。

 君はそのエルフを……。


  →買う。

   買わない。


 君はそのエルフを買うことに決めた。

 商人に金を払い、君の前へとエルフが連れてこられると契約の証として君の血を少し垂らした胸元へと奴隷契約の焼印が押された。

 これでエルフは君の所有物となった。


「……わたしを買ってくださり、ありがとうございます。ご主人様……」


 感情の篭っていない瞳を君に向け、エルフは淡々と口を開く。

 その姿に前の主人のせいで彼女には感情が欠落してしまったのだろうと君は理解する。

 そんな彼女を連れて、君は家へと戻る。

 家の中へと入り、部屋を案内しようとした君だったが、エルフは服とも言えない着ていたボロを突然脱いだ。


「どうぞ、粗末な体ですがご主人様の好きにしてください……」


 そう言って着ている物をすべて脱いだ彼女の体にはすり傷、拘束によってつけられたであろう痣、殴打による青痣や血のうっ血した箇所が見受けられた。

 正直立っているのも限界であろう彼女だが奴隷としての身分を弁えているようだった。

 服もだったが体もボロボロとなっていると改めて理解しつつも君はエルフの容姿を改めて見る。

 脂と血で固まっているけれど長い金色の髪。

 暴行を加えれてはいるが、元は綺麗な肌と体型だったのが分かる。

 そんな彼女を見つつ君は道具箱を漁る。

 君はエルフにアイテムを差し出した。

 そのアイテムとは、


  →傷をたちどころに治す神の秘薬エリクサー

   ドラゴンをも発情させるほどの興奮剤

   結果だけ見る。


 彼女に差し出したアイテム、それはどんな傷もたちどころに治すことが出来る神の秘薬エリクサーだった。


「あの、ご主人様……これは? ……飲めば、いいのですね?」


 差し出されたアイテムが何なのかは分からないけれど、主人である君に言われるがままにエルフはエリクサーを飲んだ。

 すると……。


「っ!? ぇ、あ……? え……?」


 彼女の体がうっすらと発光し、まるで時間を巻き戻すかのように体についていた傷が消えて行った。

 そして光が収まる頃にはエルフの体に付けられていた傷は綺麗さっぱりと無くなっていた。

 戸惑いながら、エルフは自身の体をぺたぺたと触り始める。

 君はそんな彼女の姿を見ている。

 傷が無くなったエルフの体は思った通り白く美しい肌をしており、スラリとした体型はまるで妖精のように感じられた。

 ただ、少し平たいのはエルフ特有のものなのだろうか。

 そんなことを思っていると、エルフは君の視線に気づいたようだ。

 彼女は頬を少しだけ赤くし、


「…………その、あまり見られても、困ります」


 と言って、自らの体を隠すようにして腕で胸と股間を隠した。

 先ほどの淡々と服を脱いだ彼女の様子と違って見え、君は少しだけ驚いたが……きっと傷付いた自身の体などもうどうでもいいと思っていたのかも知れない。

 そんな彼女を見て君は微笑んだ。

 それが恥かしいのか、エルフは頬を染めつつ君から視線を外す。

 ……だが、その瞬間、ググゥ~~……。という音が2人の間を包んだ。


「………………っ!」


 彼女は自らの腹から鳴った音だと気づき、顔を真っ赤にして体を震わせた。

 そして、まるで君に怯えるかのようにその場で土下座をした。


「も、申し訳ありません……! ご主人様にあのような態度を取ってしまい……! その上、このような粗相まで……!」


 どうやら傷が治ってエルフは浮かれてしまっていたようだ。

 そして前の主人のときに同じように腹を鳴らしたことがあったのだろう、そのとき酷い目に遭いそれを思い出したのだろう。

 エルフの裸土下座という光景に少し君は興奮するが、いつまでも見ているのは可愛そうだろう、そう思いながら視線を逸らして君は台所を見る。

 そこには新鮮な食材、腐りかけの食材、ゴミがあった。

 それを見てから、君はもう一度彼女を見た。 そして君は……。


  →新鮮な食材で料理を作ってあげた。

   腐りかけの食材で料理を作ってあげた。

   ゴミを地面に落としてそれを食べさせた。


 嫌いな食べ物はあるか? 君はそう尋ねる。


「え、あ、あの……」


 突然の問い掛けに、彼女は戸惑いを見せるけれど君を見た。

 そんな彼女に君は微笑むと、一瞬彼女は呆けた表情を浮かべたが……。


「き、嫌いな物など……ありません」


 彼女はそう言うが、エルフなのだから嫌いな物はあるだろう。

 君はそう思いながらジッと見つめていると、彼女は視線に耐えられ無くなったのか……重い口を開いた。


「そ、の……野菜が、好き……です」


 野菜か、分かった。君はそう言ってから、近くに置かれていた布を彼女に掛けた。

 何時までも裸でいさせるわけには行かないのだから。

 少しここに座って待っていてくれ、君はエルフにそう言って椅子に座らせると彼女は言われるままに椅子に座った。

 それを見てから君は新鮮な食材の中から野菜を見繕い、どんな料理が創れるかを考え……手早く取り掛かった。

 野菜の皮を剥き、食べ易い大きさに切り、鍋に入れていく。

 水を入れ、火にかけて、調味料などを入れて行きぐつぐつと煮立てて行く隣で、食べ応えがある芋のサラダを作っていく。


「あ、あの、ご主人……さま? いったい何を、作っているのですか……?」


 不安そうにエルフが問いかけるので、君は食事を作っていると言った。

 それを聞いた彼女は顔を暗くする。

 どうやら彼女は作る料理が美味しそうだと思った反面、自分には与えられない物だと考えたようだった。

 それに気づかない君は料理を作っていき、次々とテーブルに置いて行く。

 そして、軽く火で炙ったパンを皿に乗せて、エルフの座るテーブルの前に置いた。


「…………え?」


 意味が分からない、そんな風にポツリと言葉を漏らすエルフに君は食べようかと言う。

 そんな君へと、彼女は恐る恐る尋ねてくる。


「ほ、んとうに……食べても、良いのですか……?」


 何をおかしなことを言うのだろうか、一緒に食べたほうが美味しいだろう。それに君のためのだから、そう君が言う。

 すると彼女はボロボロと涙を零し始めた。

 そんな彼女の頭を優しく撫でながら、君は彼女にスプーンを差し出す。


「いたっ、いただき……ましゅ……!」


 彼女は泣きながら、スプーンを掴むとスープに手をかける。

 温かいスープ、その温かさと久しぶりの味というものにエルフは涙を流し続ける。


「おい、しい……美味しいです……! はぐ、はぐ……っ」


 スープを飲み、サラダを食べ……久しぶりの食事にエルフは満たされ、涙を流す。

 そんな彼女を見ながら、君は次にどうするべきかを考える。

 このまま服を着せるか、それとも先に風呂に入れてやるべきか、水をかけるだけにするか。

 君は……。


   汚れた姿のまま、汚れた服を着せる。

  →お風呂に入れて、丹念に汚れを取る。

   井戸まで連れていき、冷水を被らせる。


 君は彼女をじっくりと見る。

 奴隷となっていたからだろう、彼女の体の傷は無くなっていても汚れは目立っている。

 いや、傷が無くなり美しさを取り戻した分、余計に彼女の汚れが気になった。


「あ、あの……、見られると、その……な、なんでもない、です……」


 見られながら食べているのが恥かしい、そう感じている彼女は顔を赤くしつつも、奴隷という立場を弁えているからか見ないで欲しいと言えないようだった。

 恥かしそうにするエルフへと君はごめんと謝り、視線を逸らしてから……お腹いっぱいになったら言ってくれと言う。


「わかり、ました……」


 彼女はそう言って、食事をやめようとしたが……君は我慢しないようにと言うと、彼女は食事を再開する。

 やはりお腹いっぱいになっていなかったようだ。

 君はエルフに出来るだけ我慢して欲しくないと告げると、彼女は困惑した表情を向ける。

 どうやら奴隷なのにこんな扱いを受けて良いのか悩んでいるようだ。

 そんな彼女へと君は微笑むと、少し席を外すと言って立ち上がる。

 彼女も立ち上がろうとしてたが、君はそれを制していく。

 そして君は家の風呂場に向かうと、備え付けられた水と火の魔石へと魔力を通して浴槽へとお湯を溜めていく。

 ホカホカと湯気立つお湯を見ながら、君は薬効成分のある香草の束を中に落とす。

 すると、香草から香りが漂い始め……もう一度風呂場に来たときにはまるで森にいるかのような緑のにおいに包まれているだろう。

 そう思いながら君はエルフの下に戻ると、彼女は作られた料理を粗方食べ終えていた。

 いっぱい食べたね。君がそう言うと、エルフは頬を赤くし恥かしそうに俯く。

 女性に対して言う言葉ではなかったかと少し反省をしていると、彼女はモゴモゴと口を動かすようにして……。


「おいし、かった……です」


 と言った。

 彼女の精一杯のお礼の言葉に君はどういたしまして、と言うと少し休むように言う。

 エルフはすぐにでも動こうとしていたけれど、お腹が膨れていてすぐに動くのは無理だったようだ。

 君は彼女が食べ終えた皿を片付けていくと、エルフが申し訳なさそうな視線を送っているのに気づいた。

 今は気にしないで良いよ。環境が変わったのだから、すぐに馴染めるわけがないのだから。

 君がそう言うと、彼女はやるせない気持ちがあるのだけれど、それを形に出来る言葉を持っていないようで、モゴモゴと口を動かしていた……。

 そんな彼女を君は見ていたが、もう動いても良いかと尋ねる。

 尋ねられたエルフはこくりと頷いたので、君はついて来るように言う。

 君の言葉に従って、エルフは後ろをついて行き、風呂場へと入る。


「…………ふぁ……」


 すると、鼻孔を擽る懐かしい森の香りに口から声が洩れていた。

 そんな彼女へと、君はお風呂の使い方が分かるかと尋ねる。

 尋ねられた彼女は、申し訳なさそうに首を横に振るう。

 君は彼女に、一緒に入ることになるけど構わないかと尋ねる。

 その言葉に彼女はビクリと震えて、体を抱きすくめた。……どうやら、いやらしいことをされると考えているようだ。

 ……けれど、目の前にいる君は彼女のご主人様だ。

 それを理解してるようで、エルフは君が羽織らせてくれた布を脱ぐ。

 傷ひとつないけれど、土汚れや流れた血で汚れた体が君の目に飛び込んだ。


「その、奉仕の仕方は……知りませんが、精一杯、させて……もらいます」


 彼女のその言葉に君はゴクリと唾を呑み込んでしまった。

 ……が、必死に首を振るう。

 けれど、どれだけ説得したとしても信じてもらえないだろう。

 そんなエルフに対して君は少しだけショックを受けつつも、それだけ人間……いや、男という存在を信じられないのだろうと理解する。

 そして君は服を脱ぐと、彼女を連れて風呂場へと入る。

 風呂場の中は緑のにおいがこれでもかと感じられた。

 その匂いがたまらなく嬉しいのか、彼女のエルフ特有の長い耳は獣人の耳のようにピコピコと動いているように見えた。

 君は彼女に床に座るように言う。


「わかりました……」


 覚悟は出来ている、そんな雰囲気を醸し出しながら彼女はその場に座る。

 床の冷たさを感じたからか彼女の体が震える。

 少し熱いぞ、そう言って君は彼女の頭の天辺から桶で掬ったお湯をかける。


「ん……っ」


 君の言葉を聞いていたけれど、熱かったようで彼女の口から声が洩れてビクンと体を振るわせる。

 もう一度、今度は多めにかけると君が言うと、こくりと頷いた。

 バサッ、と強めに頭からかけられたお湯で彼女の髪は肌にベッタリと張り付く。

 それを見ながら君は、液体状の髪用石鹸を手に垂らすと彼女の頭に触れた。


「ひゃんっ!? あ、あの……あぅ!? 目、目がぁ……」


 戸惑いながら目を開けていたのだろう、石鹸が目に入ったのか悶え始める。

 ちょっと我慢してて、君はそう言ってザッザと髪を洗っていく。

 けれど汚れがこびり付いているのか、髪から泡が全然立たない。

 一度洗い流そうと君は考え、再びお湯を頭から流していく。すると汚れは少し落ちていたようで黒い水が彼女の体を伝って落ちていった。


「うぅ……め、目がぁ……。え、あ、大丈夫……です。次はちゃんと、目を……閉じてます」


 顔を押さえながら呻くエルフに苦笑しつつ君は顔を拭って上げると、目の痛みは和らいだようで、君に申し訳なさそうに謝る。

 そんな彼女の体もだが、君の体も冷えており……君は彼女とともに浴槽に入った。

 2人分の体積を受け入れた浴槽からお湯が床に流れ、代わりに君とエルフの体に温かい温もりが与えられる。

 その温かさに君は息を吐きつつ、彼女の顔を見ると……見事に蕩けていた。


「は、はふぅ~~~~…………」


 緩い声が無意識に出てるのだろう、彼女が気づいた様子はない。

 気持ち良いか? 君がそう尋ねると、ビクッと彼女の体が震えた。

 どうやら君という存在をも忘れるほどに蕩けきっていたようで、君はくすりと笑う。

 そのことが恥かしかったのか、彼女の長い耳までも真っ赤に染まっているのが見えた。

 そして、風呂という物は聞きたいことも気軽に聞ける場所だ。

 だからだろう、彼女は君に恐る恐る尋ねてきた。


「あの、ご主人様……。何故、わたしにこれほど優しくしてくれるのですか……? 奴隷は、殴ったり犯したりするのが当たり前なのに……」


 聞くのが怖い、そう思っているように君はそう感じられた。

 だから君は彼女に……。


   一目惚れしたからだよ。と言った。

   可哀想だったからだよ。と言った。

  →秘密だよ。と言った。

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