まとめ5 二日目・4

  →犬を『ココア』、猫を『ミルク』にした。

   犬を『チョコ』、猫を『バニラ』にした。

   犬を『フレア』、猫を『アイス』にした。


 焦げ茶色の髪をした犬少女の名前を『ココア』

 白い色の髪をした猫少女の名前を『ミルク』

 君はそう決め、刻印に名前を描く。

 すると、君の魔力が刻印の中央に少女たちの名前と主人となる君の名前を刻みつけ始める。


「んっ、んあっ!? にゃぅぅぅ……!!」

「わ、わふぅ……♥」


 刻み付けられる度に少女たちの体に快感が走るのか、幼さの残る声の中に艶が交じる。

 大丈夫かと意識のある猫少女――ミルクに尋ねると潤んだ瞳を君に向けるが、キュッと唇を噛んで堪える。


「だい、じょうぶ……っ。たえる、から……!」


 辛かったら服を掴んでもいいし、気絶してもいいと君は言う。

 その一方で、幸せそうな夢を見ているかのように犬少女――ココアは身を捩らせている。


「わふぅ……♪ くぅん……♥ きゅぅん……」


 どんな夢を見ているのかは分からないが、いい夢なのだろうか寝返って曝け出された尻尾がブンブン左右に動いている。

 と、そう思っているとミルクが君の服を掴んだ。


「や、っぱり……あるじの服、つかませて……んぅ♥」


 刻印に名前を刻み付けられているからだろう、少女たちが魅惑的に感じるのは。

 そう思っていると君の魔力が少女たちの刻印に名前を付けるのが終了した。

 直後――、少女たちの体がビクビクと震えた。


「ん……っ! んんんっ!! ~~~~――――っっ!!」

「わふっ……あ、んっ……♪ わ、わふぅぅぅぅぅぅ!!?」


 そして名前を刻むのに体力を使ったのか、くてっと少女たちは動かない。

 君は登録に成功しているかと少女たちの淫紋を見る。

 するとハートマークの中央に少女の名前と君の名前があった。

 それを見届け、君は所有者権限として君の魔力を受けて妖しい光を放つ淫紋を不可視にするようにした。

 すると少女たちの下腹部に消えるように淫紋は消えていく。……ただし、種のような刻印は消えない。

 例えるなら咲いた花が種に戻ったように見えた。

 君はそう思っていると、視線を感じた。

 ミルクだ。彼女の青く透明な瞳が君をジッと見ていた。

 目が覚めたのかと尋ねると、ミルクはこくりと首を振る。


「おはようあるじ。……あるじって呼んでも、いい?」


 彼女の問い掛けに君が頷くと、ミルクはほんの少しだけ口を動かした。


「よかった」


 それは彼女の笑顔だったようだ。

 可憐な笑顔だと思っていると突然……。


「う、うわぁんっ!? あ、頭がいた――って、え?」


 ココアが突然飛び起きた。

 どうやら気絶から覚めたようだが、すぐに動けるのは感心する。

 そう思っているとココアと君の目が合った。


「……あ、ああ! お、おっさん! オレはてめーの奴隷なんかに……え」


 言い終わる前に、ココアは自身の体に違和感を感じたのかマジマジと体を見て……スカートを捲ってお腹を見る。

 そして、ギギギッと君とミルクのほうを見た。


「な、なあ、ねこ? いんもん、ないんだけど?」

「あるじが権限で見えなくした。あと、あたしミルク」


 ミルクの言葉を聞きながら、ココアは信じられないという風に君を見る。

 なので、気絶している間にさせてもらったことを言うと……ココアは頭を抱えた。


「ウ、ウソだあああああああっ! オ、オレが、オレがおっさんの奴隷に!? う、うそだろ!?」

「本当、犬もココアって名前もらった」

「ココア……。それが、オレの? って、そ、そんなの認めないからな! 認めないからなぁ!!」


 ガルルと唸り声を上げながら、ココアは君を睨み付ける。

 そんな彼女を見ているとミルクがこっそり君に言う。


「かってに奴隷にされたの怒ってるけど、名前もらってココアうれしそう」


 そうなのかと君が尋ねると、ちょいちょいとミルクは指を差す。

 彼女の指の先を見ると唸り声を上げるココアの尻尾がフッサフッサ揺れてるのに気が付いた。

 どうやら嬉しいと怒っているがごちゃ混ぜになっているようだ。

 どうしてかとミルクに尋ねると、彼女が理由を語る。


「あたしたち、今までずっと名前なかった。猫の何番とか、犬の何番とかの番号で呼ばれてた。そのほうが買われたときに名前をつけやすいからとか、言ってた」


 番号で管理して、名前は淫紋に所有者登録されるときに付ける。

 何処の組織かは分からないけれど徹底している。

 君がそう納得しているとココアが怒り出した。


「おい聞けよ! よそみして考えごとしてんじゃねーよ!!」

「ココアうるさい。あるじの邪魔しちゃだめ」

「あるじってなんだよあるじって! 簡単にしたがうんじゃねーよねこ!」


 相棒が簡単に尻尾を振る姿にココアはますます腹を立てる。

 と、そんなとき……ギュルルと大きな音が鳴り響いた。

 何の音かとそちらを見ると、真っ赤な顔をしたココアが立っている。

 ギュルルルルと未だ音は鳴り止まない。

 ……お腹、空いているのかと君が尋ねると、ココアは顔を真っ赤にしたまま赤い瞳を君に向ける。

 どうやら恥かしかったらしい。


「ココア、我慢しないほうがいい。あるじについて行ったら、おなかいっぱい食べれる。そうだよね?」


 ミルクの言葉に君は頷く。

 その答えにココアの耳がピクリと動くが、踏ん切りがつかないようだ。

 そんな彼女を説得させるのは相棒の役目だろう。

 そう考えながら君はミルクを見る。

 君の視線にミルクは気づき、むふーと意気込むように君を見てから、ココアに近付く。


「温かいごはん、おふろ、ちゃんとした服。あるじはきっと用意してくれる」

「け、けどよぉ……」

「きっとあるじはいやらしいことしない。……たまにすると思うけど、普段しないと思う」


 ミルクの言葉に君は頷く。それに安堵したのかココアがホッと息を吐くのが見えた。

 君の視線に気づいたココアはハッとし、君から視線を外そうとする……が改めて君を見た。


「オ、オレはおっさんを主人って認めていないからな! わかったか!?」


 威嚇するように尻尾を立てながら、ココアは言う。

 君はそれを告げるとココアは嫌そうな顔をし、ミルクは頷く。


「げー、まだ帰らないのかよ? どこに行くんだよ?」

「あるじの命令なら、ついていく」


 対象的な2人の反応を見ながら、君は少女2人を連れて歩き出す。

 君が向かうのは……。


  →盗みを働いた店に行き、食料を盗んだことを謝らせる。

   雑貨屋に行き、彼女たちのメイド服を購入する。

   気のせいだった。家に帰ろう。


 ココアとミルクの2人に君は言う。

 生きるためにしたことだとしても、悪いことは謝ること。――と。

 その言葉を聞いて、ミルクは理解したのか「あ」と呟き、ココアは首を傾げる。


「それじゃわかんねーよ。どこ行くんだよおっさん」

「ココア、今まであたしたちが食べものを盗んだお店、覚えてる?」

「へ? ああ、おぼえてるけど……それが?」

「あるじは、あたしたちをそこに連れていくつもり」

「……え? お、おいおっさん。オレたちを突き出すのか!?」


 ミルクの言葉を聞いて、ココアは信じられないとばかりに君を睨み付ける。

 きっと彼女の頭では酷い想像をしているに違いない。

 それが分かっているからか、君は首を振る。

 けれどココアには信じられないようだ。そんな君の助け舟を出すべく、ミルクがココアに話しかける。


「ココア、あるじはちゃんとあやまって欲しいんだと思う。ううん、多分そう」

「ミルク……、けどあやまるって……なんでだよ?」

「あたしはココアよりも街を見てたから、わかる。悪いことをしたらみんなあやまってた。一部あやまらない人はいたけど」


 謝らない人は悪いことをしても心が痛まない人だと、ミルクに君は告げると理解したように彼女は頷く。

 それを聞きながら、ココアは黙る。

 どうやら何か覚えがあるようだ。


「……盗んだ物は、ねこと食べてたからおいしかった。でも、追いかけてくる人たちの顔が頭から消えなかったんだ……これが、悪いってことなのか?」


 罪悪感をココアは無意識に感じていたようだ。強がって自分勝手な反応を見せていてもやっぱり幼い子供なのだ。

 そう思いながら、君はココアを撫でる。

 悪いことをしたってわかってるんだから、謝りに行こう。

 そう告げるとこくりと彼女は頷く。……がすぐに撫でられていることに気づきギロリと睨み付けてきた。


「て、てめー、なに頭なでてるんだーっ!!」

「あるじ、あたしにもして?」


 唸り声を上げ君を睨み付けるココアを見ていると、ミルクが言う。

 その言葉に頷き、君はミルクの頭を撫でる。


「にゅぅ……♥」


 君に撫でられるのが嬉しいのか、ミルクの口から気持ち良さそうな声が洩れる。尻尾もゆらゆら揺れているのが見える。

 そして君は2人の頭を撫でてから改めて思う、この子たちの綺麗になった髪はきっと良いものだと。

 何故ならば、汚れでパサついている2人の髪だがココアはモフモフと柔らかく感じられたし、ミルクはサラサラしていた。

 まあ、フィンよりは汚れがない所を見るとこっそりと小川で体を洗っていたりしてたのだろう。

 君はそう思っていると、ココアがミルクを撫でる君の手を引き剥がした。


「おっさん、いつまでなでてるんだよ! あやまりに行くならはやくつれてけよーー!!」

「うにゅん、そうだった……。あまりの心地よさに忘れてた」


 ぽわぽわしながらミルクが君を見て、2人の視線に見られながら君は移動をすることに決めた。

 ちなみに2人には持って行きたい物はなかったらしい。

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