まとめ42 故郷・1
ガタガタと軽く揺れる中、君は窓から外を眺める。
外はごろごろとした岩が散らばっており、なだらかな坂となっていた。
どうやらメタルドラゴンが牽く家は山道に入ったようだ。
そう思いながら君は部屋から出ると階段を上り展望台へと向かう。
「あ、ご主人様……」
階段を上る君へと声がかけられる。
階段から上を覗くと、純白の下着が話し掛けてきた。
間違えた、上を覗いた結果……階段まで近付いてから声をかけてきたフィンの下着が見えたのだ。
君が下着が見えていることを告げると、彼女はスカート部分を両手で押さえて階段から離れた。
「あ、あのその……は、恥かしいです」
君に下着を見られていた。それを恥かしそうにフィンが言うけれどそれ以上のことをしてるのだから今更だとは思う。
なので君はご馳走様です。と告げるとフィンは目をパチクリとさせ……、
「えっと、お……そまつさま、でした?」
と君の言葉の意味を理解出来ないまま返事を返す。
そんな彼女の仕草が面白いと思いつつ、何をしていたのか尋ねると彼女は表情を暗くした。
「外を見ていました……。ですが、何もないですね……」
彼女の言葉に君も周囲を眺めるけれど、先ほど窓から見たように荒廃した地面にゴロゴロと大小の岩が落ちているだけだった。
昔はこうではなかっただろう。
君がそう言うとフィンが君を見た。
「そう、なのですか?」
君の言葉に彼女は尋ねるが……実際のところは分からない。
けれど少なからず緑もあっただろうし、水気もあったはずだ。
出は何故今この土地は死んでいるのか、答えは簡単だ。
魔の土地となってしまったからだ。
「魔の土地、ですか? 魔……モンスターと関連性が?」
彼女の言葉に君は頷き、説明をする。
この周囲、いや少し前からこの土地はモンスターに支配されていた領域だったのだ。
モンスターに支配された土地は人が住むのに適さない土地となり、緑も水も無くなってしまう。
岩だけの土地となるのだ。
まあ、森を自身のフィールドとするモンスター等の場合は森をそのままにしていたり、逆にわざと活性化させたりする場合もある。
「こうなった場合は、もう元通りには戻らないのですか?」
見える景色を見ながらフィンが君へと尋ねる。
その問い掛けに君は返答する。
数十年という長い年月の間、ほぼ毎日の時間を土地の浄化に費やせば元通りになると。
君の言葉を聞き、フィンはなんとも言えない表情を浮かべる。
そんな彼女のを見ながらもうひとつ方法はあることを君は告げる……が、それはお勧め出来ない。
「お勧め出来ない方法……ですか? それはいったい」
君の顰める顔を見ながら、遠慮がちにフィンは君に尋ねる。
なので君は行わないようにと念を入れてから彼女へとその方法を告げるために指をとある方向へと指した。
「あそこは……そのまま進めば山頂、ですよね?」
彼女の言葉に君は頷き、指した理由を語った。
モンスターが支配する土地の山頂や森の奥といったところには、その土地の支配者と呼ぶべきモンスターがいる。と……。
「支配者、ですか?」
彼女の言葉に頷き、支配者が土地の支配を行っている象徴であることを告げる。
君の言葉に彼女も理解したようだ。
「つまり、支配者を倒すことで元通りに?」
彼女の言葉に君は頷き、倒そうとしてもちょっとやそっとでは倒すことは出来ないほどの強さを持っていることも言う。
事実、数年前に幼いサンズたちと共に旅をして出向いた先で支配者と戦った。君たちは死にそうな思いをしてようやく倒すことが出来たけれど……二度と戦いたくないとも思っていた。
君がそう言うと、フィンは顔を蒼ざめさせていた。
「サンズたちも、ご主人様ももう戦いたくないと言う程に酷いモンスターなんて……わたしには無理ですよ」
そんな彼女の様子を見て君は安心した。
当たり前だ。無謀にも突撃をしたりしたらそれはもう死にに行くようなものなのだから。
そんな君の様子に気づかないままでいるフィンへと君は言う。
自分から突くか、土地の浄化が本格的に行われたりしない限りは手を出されることはないことを。
「そ、そうですか……よかったです。……って、土地の浄化を行っていても最後は戦わないといけないんじゃないですか!」
君の言葉にフィンは驚き、声を上げる。
そう、だから魔の土地を人の住める土地に治そうとするのは基本的に無理なことなのだ。
けれどある島国ではその土地の支配者が人と意思疎通を行い、神として君臨しており豊穣を約束しているというモンスターらしくない土地もあると聞いたこともある。
つまりは自分たちにはよく知らないことがまだまだあると言うことだ。
そう思いつつ君は外の景色を眺めていると、何かが接近してくるのに気づいた。
それは……、
複数の巨大な山サソリだった。
巨大な岩トカゲだった。
一頭のワイバーンだった。
→全速力で逃げる馬車だった。
君は土煙を上げながら、何かが接近してくるのに気づき、目を凝らしてそちらを見る。
するとそれが一台の馬車であることに君は気づいた。
同じように君と同じ方向を見ていたフィンも土煙を上げながら全力で走る馬車に気づいたようだった。
そしてその馬車を追いかけるように走るモンスターにも……。
馬車の人たちはいったい何をしたのだろうか?
それは分からないけれど、現在馬車を追いかけているのは地上の巨大な岩トカゲと空のワイバーンだった。
多分だけれどこの土地で中の上ほどの強さに位置するモンスターだろう。
そう思いながら馬車を見ていた君たちだったが、フィンがハッとした。
「ぼ、ぼーっと見てる場合じゃないじゃなですか!! 助けないと!!」
フィンがそう言って慌てながら、他の子たちに呼び掛けに向かうのか急いで階段を下りていった。
彼女が居なくなった後も君は馬車を見ていた。
当たり前だ、この周囲に人が住んでいる……いや、住める町や村は無いのだから。
では馬車はいったい何故こんな場所を走っているのか、その答えはすぐに判明した。
君が見ている全力で逃げる馬車の中から何かが放り出され、岩トカゲは少しだけ立ち止まり……口を動かすのが見えた。
そんな岩トカゲから逃げることが出来た何かへと上空からワイバーンが襲いかかっていた。
正直、フィンが見ていなくて良かったと君は思う。
そう思いながら、君が下へと下りると飛び出す準備が完了と言わんばかりに装備を整えた彼女たちが立っていた。
「おっさん、敵はどんな感じ?」
「怪我人は居るのです?」
「メタルドラゴンで援護したほうが良いかな?」
「後ろはお任せさー♪」
「クククッ、我輩の魔法が唸るな」
戦い慣れてる勇者パーティは意気揚々と君に応えていくが、フィンたちは何処か緊張気味に感じられた。
当たり前だ、ちゃんとしたモンスターとの戦いはこれが始めてなのだから。
そう思いながら君は馬車を追いかけてるのは岩トカゲとワイバーンであることを告げる。
君の言葉にサンズが頷くと同時に入口の扉を開けると同時に飛び出した。
「それじゃあ、サクッと倒してくるよ!」
サンズが飛び出したのを見たからか、メタルドラゴンが移動を止め……その場に立ち止まり、家が停車した。
そして停車した家から、全員が下りて外へと出た。
外へと出ると、逃げる馬車を横切るようにしてサンズが素早く移動し、地面を走る岩トカゲ目掛け剣を構える。
『SYAAAAAAAA!!』
「でりゃあああああああっ!!」
雄叫びを上げながら大口を開けて襲いかかる岩トカゲへと、サンズは咆哮と共に剣を振り下ろした!
ズダンッ! と激しい音がした瞬間、岩トカゲの口が真ん中で避け、巨大な体をその場で揺らしはじめる。
それを見ながら、サンズは追撃を始めようとするが……空からの気配に距離を取った。
『GISYAAAAAAAA!!』
「うわっと!! 空のワイバーンと協力関係なのかな?! やりづらい!」
「セインたちも早く向かうのです!」
戦い辛そうにしているサンズを見て、セインはサンズが戦う場所へと向かおうとする。
だが君は駆け出そうとする彼女たちを呼び止めた。
「な、なんだよごしゅじん! 早く行かないとサンズがあぶねーだろ!?」
「ん、あたしたちも楽勝だと思うから、心配しないで」
心配だから呼び止めた。そう考えながら、ミルクとココアが君に笑いかける。
その言葉に君は信じているから心配はしていないと告げる。
「ご、ごしゅじん……♥」
「あるじ……好き♥」
嬉しそうに彼女たちの尻尾が揺れるが、今は時間が無いので行動に移ろうと君は言う。
「行動って、何をするつもりなのです小父さま?」
「何か頼みごとなのかな?」
「何でも言ってほしいさー♪」
「クククッ、面白いことを言ってくれるのだろう? 小父殿よ」
君の行動に期待するように彼女たちは君を見る。
そんな彼女たちへと君は役割分担を告げる。
フィン、マジックはサンズの援護に回ってほしいと言い。
ココア、セインは岩トカゲたちが駆け抜けたほうへと向かって欲しいと言う。
スミス、クラフは他にモンスターが来ないか見張りを行っていて欲しいと言う。
そして、ミルクは自分と馬車を止めるように言った。
君の言葉に数名が首を傾げた。
「あのモンスターが通った方向に? 何で?」
「……あ、小父さま……?」
首を傾げるココアと何かに気づいたセイン。
セインへと君は何も言わずに頷くと、痛ましそうな表情を浮かべつつ向こうを見る。
「ココアさん、小父さまの言った通り早く向かうのです。手遅れになる前に」
「え? あ、ああ」
何の事か理解出来ないまま、ココアはセインと共に駆け出していく。
そんな2人の様子に困惑しつつも、モンスターの咆哮に気づいたフィンはマジックを見る。
「マジック様、速くサンズを助けに行きましょう!」
「ククッ、わかった。我輩の魔法を見せてやろうではないか」
そう言って2人は駆け出す。
「それじゃあ、叔父さん。あちきは物見台で周囲を見て、危なかったらメタルドラゴンで迎撃するね」
「わっちらのメタルドラゴンは最強一歩手前なのさー♪」
そう言いながら、スミスとクラフは家の中へと入り、物見台へと移動を始めたようだった。
それを見届けてから、君はミルクを見る。
「あるじ、馬車を停めるのはどうして?」
どうやらミルクは君の行動を理解出来てないようだった。
そんな彼女へと君は理由は後で話すと言う。
「わかった。それじゃあ、あるじ。あの馬車を停めに行こ」
頷いた彼女と共に、君は全力で駆ける馬車を追いかけるために筋力を強化して駆け出した。
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